加えて、その仕事の意義については、下記のように語った。

「この仕事は心身ともに大きな負担となりますが、入浴後の高齢者の喜びにあふれた笑顔を見たり、家族にとても感謝されると、私たちまで涙が流れ、疲れを忘れてしまいます。日本の素晴らしい介護理念をこのような形で中国に浸透させていくことや、高齢者の尊厳のある人生とQOLを高めていくことに責任と充実を感じます」

入浴のために高齢者をケアするスタッフ(上海で様子)
入浴のために高齢者をケアするスタッフ(上海での様子)

 また、そのリーダーの女性は、自分の体験として、下記のようなエピソードも披露した。

「ある家族から、『父親はもう長くない、最後に入浴させたい』と至急の連絡がありました。慌てて行って、入浴をさせた数分後、そのおじいちゃんが気持ちよさそうに穏やかな顔で息を引き取りました。その瞬間、『やりがいのある仕事だ』と誇りを感じることができました」

「日本の介護の理念」を
中国に浸透させたい

 一方、日本側の介護事業者、康新の代表者である新井健次氏にも話を聞いた。

 新井氏は事業の今後について「現在、この事業はまだ赤字ですが、日本のように介護保険が適用されることがない中で、自己負担で決して安くないお金を払ってでも入浴サービスを受けたいという人がいます。これから高齢者を含め身体障害者など、隠れたニーズはとても大きいとみています」と、見通しを語った。

 さらに、「体が不自由になっても尊厳のある人生を送れるという『日本の介護の理念』を浸透させていきたい」と、中国で「日本式介護」を行う意義を強調した。

 現在、この入浴サービスの料金は、1回につき450元(約7200円)となっている。これは上海の高齢者が手にする月平均の年金の1割以上に及ぶ額である。

 今年は春節の前に、上海各区の政府が補助金の支給を開始したこともあり、訪問入浴に問い合わせが殺到した。中国では体をきれいにしてお正月を迎える習慣があるからだ。スタッフは毎日12時間のフル稼働だったという。

日中の「お風呂文化」は
天と地ほど異なる

 日本の読者は、「たかが、お風呂」と思われるかもしれない。しかし、ここまで来るのに、いろいろな葛藤もあったであろう。日本の「訪問入浴」というシステムを導入すること自体、かなりの「勇気と決断」が必要であったであろうと、筆者は予想する。

 というのも、そもそも日本と中国の「お風呂文化」は天と地ほど異なるからだ。