ドルは今年の下落予想を裏切っている。ドルは主要通貨のバスケットに対し、年初から約2%上昇した。投資家の間では、ドル高は世界の同時回復が期待ほど順調ではない兆しだとみられている。これは米株市場や米国債市場の発するシグナルと食い違う。世界が新型コロナウイルス対策の経済活動規制から脱する中、米株や米国債の投資家は景気回復に賭けている。ドルの上昇はデリバティブ(金融派生商品)市場のドル安を見込んだ持ち高とも相反する。ドル高が続けば、ドル建ての借り入れへの依存度が高い新興国市場の回復が損なわれかねないとの懸念もある。大半の投資家やアナリストは昨年11月の米大統領選以降、インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数が下落すると予想していた。投資家が比較的安全とされる米市場から資金を移し、他国の株式をはじめとする資産の上昇に賭けるため、ドルの下落率が20%以上に達するとの予想もあった。