今年の残暑は記録的な厳しさでしたが、秋分の日を越え10月になれば、夏も完全に過ぎ去り、秋の気配が濃厚な今日この頃です。そんな時に聴きたくなるのは(人ぞれぞれで一般化できないのは十分わかっていますが敢えて言えば)、電気をバリバリに使った大音量のロックとか前衛的で芸術的な現代音楽というよりは、肩の凝らない癒しの要素が詰まった音楽です。

「ゲッツ/ジルベルト」

 しかも、ちょっと欲張って、単に癒しの音楽というのではなく、静かな中に躍動感があって、明朗な響きの中に一つまみの哀愁が漂う品の良い音楽であれば言うことなしです。

 そんな音楽がありますかね?
  はい。ちょうど良いのがボサノバでしょう。

 と、言うわけで、今週の音盤は“イパネマの娘”を収録しているスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの共演アルバム「ゲッツ/ジルベルト」(写真)です。

世界で2番目に多く
カヴァーされている曲

 ボサノバと言えば“イパネマの娘”。“イパネマの娘”と言えばボサノバ。世界で最も有名なボサノバの曲です。しかも、ボサノバという範疇を超えても、間違いなく20世紀が生んだ名曲です。“イパネマの娘”は、世界で2番目に多くカヴァーされている曲として知られています。1番はビートルズの“イエスタデイ”ですが、そのことに関し、作曲者アントニオ・カルロス・ジョビンは「だって、彼ら(ビートルズ)は4人だからね……」と言って笑ったそうです。