3月5日に発表された2021年2月の米国雇用統計では、感染拡大ペースの減速に伴って行動制約が再び緩和され、雇用環境が回復軌道に復しつつある状況が確認された。さらに現在、大型の追加経済対策が成立間近となっており、家計所得を押し上げ景気浮揚が期待されるが、雇用の本格回復には新型コロナの終息が必要である。米国本来の成長パターンである内需の好循環に復する時期を、医療・政治面から考察する。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
感染状況の緩和によって
雇用者数が急増
2021年2月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+37.9万人と2ヵ月連続で増加した。さらに、1月分も同+16.6万人へと大幅に上方修正(改定前は同+4.9万人)され、今年に入ってから雇用の増勢が強まっている姿が確認された(図表1参照)。
業種別に確認すると、好調な住宅需要に支えられ増加が続いた建設業が、昨年4月以来の減少に転じたが、雇用の大宗を占める民間サービス部門が同+51.3万人と昨年10月以来の大幅増となり、全体の伸びが加速した。
特に、昨年末以降減少に転じていた宿泊や飲食などのレジャー関連が、2月に急増した。後述するように、新型コロナの感染拡大ペースは今年に入って大幅に減速し、それに伴って行動制約が再び緩和に向かっている。人々の外出行動が持ち直したことが、レジャー関連の雇用増につながったとみられる。
ただし、レジャー関連は急増したとはいえ、昨年11月の水準を回復しておらず、コロナ前である昨年2月に比べても2割低い水準に留まっている。雇用者数全体でもコロナ前の6%低い水準であり、回復軌道に復したもののいまだ道半ばである。