政府は、新型コロナウイルス対策として東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県に発令中の緊急事態宣言を、3月21日まで2週間延長することを表明した。私は、宣言の延長には反対ではない。しかし、なぜ延長しなければならなかったのかには疑問がある。中途半端な対策で混乱する日本で、今求められているのは「政策決定の専門家」だ。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
支持率に振り回されて、肝が据わらないコロナ対策
今回の首相官邸主導の決定の理由は、さまざまあるだろうが、重視したのは「支持率調整」だったとみられる。
元々、菅義偉首相は、3月7日で宣言を終結させることを目指していた。だが、「与党議員の銀座クラブ通い」や「首相長男の官僚接待疑惑」などスキャンダルが続発して内閣支持率が急落していた。
一方、80%近くの人が宣言延長を支持するという世論調査(参考:日経新聞)が出ていた。ここで宣言解除を強行して、感染拡大のリバウンドが起きたら、内閣支持率がさらに下落する。菅政権は、それを恐れたのだ。
これまでも、新型コロナ対策は、後手に回っていると批判されてきた。後手になったのは、支持率の推移で対策を決めてきたからだ。宣言延長の是非以前に、首相官邸主導の意思決定が、相変わらず支持率に振り回されて腰の据わらないものだということが、まずは看過できない問題だろう。