今求められるのは「政策決定の専門家」

 政策を決めるのは、あくまで政治家だ。だが、政治家は世論の動向、支持率の上下には敏感だが、結局はそれに右往左往させられているだけで、政策決定は後手に回るばかりだった。

 また、問題の本質にある構造問題は、医学や経済の専門家にはわからない。これは、政治家こそが専門家だったが、手を付けられなかった。もしかしたら、構造問題の存在に気付いてさえいなかったのかもしれない。今や政治家は、「政策決定の専門家」とはいえない状態だ。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 だが、新型コロナをグローバリゼーションの時代のリスクの事例だとするならば(第263回)、これからの時代に必要なのは、医療、経済など個別の分野の専門家だけではなく、「政策決定の専門家」だということが明らかになったのではないか。

 さまざまな個別の分野の専門家の知見を理解する能力を持つと同時に、社会全体の複雑な構造を理解して、個別分野の限界を超えた現実的な政策を立案し、その実行を決断する指導力を持つ人材だ。つまり、「専門性」「社会構造」の理解と、決断力・指導力という「人間性」を三位一体で併せ持つ人材を育成しなければならない。

 もちろん、このような人材を一から育てていたら、何十年かかるかわからない。現在、政治に携わっている人たち、これから政治を目指す若者すべてが、「政策決定の専門家」になることを自覚して日々精進していくしかない。そうでなければ、激変する世界の中で、日本を守っていくことはできないということを、コロナ禍は明らかにしたのだと考えている。