売り上げにしか関心がなく、その金額を基準に人事評価をする上司もいるが、そのような上司の下ではどのようなことが起こるだろうか。売り上げにつながらない仕事は誰もやりたがらず、直接売り上げにつながらない仕事では手抜きが横行するはずだ。数字にならない仕事はしなくなり、数字にならない努力をするのはバカらしいということになる。

 たとえば、たいした金額の売り上げにならない客への対応に時間をかけたくないといった思いに駆られるため、顧客対応がずさんになっていくだろう。

 また、売れたら即座に別の客の対応をしたいといった気持ちが強くなるため、気持ちをつなげるためのちょっとした雑談も減っていくだろう。

 じつは、そうした一見ムダに見えるやりとりが売り上げに貢献していたかもしれないのに、目の前の数字にとらわれることで、顧客からの評判を落とすことになりがちである。

接客数が人事評価になり
応対が悪い店員の評価がアップ

 結果としての数字はわかりやすい。売り上げを伸ばしている人物と伸び悩んでいる人物を容易に見分けることができる。

 だが、その背景に目を向けず、目先の数字にばかりとらわれていると、将来痛い目に遭うことも考えられる。

 たとえば、すぐに売り上げにはつながらないが長期的な視野のもとでは大切となる種まき的な仕事というものがある。すぐに成約数や販売額につながらないものの、ていねいに相談に乗ったり、アフターサービスをきちんとしたりすることが、将来の契約や販売につながっていく。だが、そのような対応がおろそかになることで、将来のビジネスチャンスを失うことになりかねない。

 接客数が人事評価に影響することになってから、職場の雰囲気や仕事の質が悪化したことを危惧する声もある。

 営業部に属するある人物は、次のように嘆く。

「上司から、接客数が評価基準に採用されたから、毎日記録するように言われているんです。でも、客にどんな対応をしているかの仕事の質は考慮されないんです。そのせいで、ほんとうは売り上げに貢献している人が評価されなくなりました。

 客に対してていねいな応対をしていると、どうしても一人の客に時間がかかってしまうじゃないですか。常連客からよく相談を受ける店員は、客から信頼を得るための良質な接客をしているのに、接客数が少ないために評価が低くなるんです。応対が悪く常連客から敬遠されるようないいかげんな店員の方が、接した客数が多いということで、かえって評価が高くなっちゃうんですよ。おかしいと思いませんか。こんなことをしていたら、この会社、ダメになっちゃいますよ」

 もっともなことである。そんな評価では、誠意をもって対応し客から信頼を得る人物が評価されず、親身になって客のことを考えずに数だけさばこうとする人物の数字ばかりが上がっていく。

 数値化しやすいところだけを評価基準に取り入れていくと、そうしたことが起こってしまうのだ。