10万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏と、発売直後に大重版がかかり話題を集めている『超★営業思考』の著者・金沢景敏氏の対談が実現した。テーマは「『圧倒的な結果』を生み出す思考法」。安藤氏は、人と会社を成長させるマネジメント法「識学」を世に広め、数々の企業の業績アップに貢献している。一方の金沢氏は、プルデンシャル生命保険入社1年目にして国内営業社員約3200人のトップに立ち、3年目には、日本の生命保険募集人登録者約120万人の中で毎年60人前後しか認定されない「Top of the Table」に到達するなど、伝説的な実績を残した。「圧倒的な結果」を生み出すには、何が必要か。「マネージャー」と「プレイヤー」、それぞれの観点から語り合っていただいた(構成:ライター 前田浩弥)。

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「本気の人」に対する強烈な敗北感が、人生を変えた

金沢景敏氏(以下、金沢) 仕事において「プロセス」と「結果」、どちらにフォーカスすべきかはよく議論になりますが、ぼくは断然、「結果」だと考えています。

 はっきり言ってしまえば、どんな「プロセス」でもかまわない。「結果」さえ出せれば、どんなやり方でもいい。むしろ、「プロセス」にフォーカスしてしまうから、「自分なりに頑張っているのに結果が出ない」なんていう“言い訳”が生まれてしまう。

 それは誰にとっても幸せになりません。頑張るのは当たり前で、問われるのは「結果」でしかない。もちろん、「プロセス」も大事なんですが、僕ははじめに「結果を出す」と決め、「結果」を出すためにはどうすればいいかと高速で試行錯誤を重ねながら、自分なりの「プロセス」をつくり上げていったという感じです。

安藤広大氏(以下、安藤) まさに、『超★営業思考』に書いている通りの考え方ですね。

金沢 はい。安藤さんは「識学」という考え方をベースに、『リーダーの仮面』を書いていらっしゃいますが、「識学」的には、「結果」と「プロセス」についてはどう考えられますか?

安藤 金沢さんと同じですよ。とにかく「結果を出す」ことが大前提。そこから逆算して成功する「プロセス」を見出し、ブラッシュアップを続ける。この考え方をとことん突き詰めたからこそ、金沢さんは生命保険営業で伝説的な実績を残せたわけです。

「識学」では、それを個々の思考に委ねるのではなく、組織全体が「結果を出す」ことにフォーカスできるような仕組みを整えなければならないと考えます。言ってみれば、全員が金沢さんのような思考法をもつためには、マネージャーは「何」をすべきで、「何」をしてはいけないかを書いたのが『リーダーの仮面』ということになります。

 ところで、本を拝読して、金沢さんと私は、歩んできた人生における共通点が多いなと感じました。家が貧乏だったところとかね(笑)。あと、金沢さんがアメフト、僕がラグビーをやっていたのも近いものがある。だから自然と、考え方も似ている部分があるのかもしれないと思いますね。

安藤広大(あんどう・こうだい
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2020年10月現在、約1900社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。

金沢 安藤さんは以前、「早稲田大学のラグビー部でレギュラーになれなかったことが、自分の人生にとって大きな分岐点だった」とおっしゃっていました。

安藤 そう、そこも似ているんですよね。金沢さんは京都大学アメフト部のレギュラーで活躍していましたが、口では「大学日本一になる」と威勢のいいことを言いながら、そのために自分自身を極限まで追い込んで頑張ることはなかった。その忸怩たる思いが、「日本一の営業会社であるプルデンシャル生命保険で、日本一になってみせる」と奮起した原動力になった、と書かれていますね。

 ぼくも同じで、早稲田大学ラグビー部時代、「レギュラーになる」「早明戦に出る」と口では言いながら叶わず、すべてが終わった後に「結局は本気でレギュラーを目指していなかったな」と思ったんですよ。

 社会に出てから、もう、そういう後悔をするようなことは絶対にやめようと思いました。だから、会社を立ち上げたときに「上場する」と宣言し、「上場」という結果から逆算して、「上場するための行動」をプロセスとして積み上げていきました。

金沢 たしかに、大学時代の挫折をバネにしたという点は、僕たちは似ているところがありますね。それにしても、見事に「創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場」という結果をつかんだのですから、本当にすごいことだと思います。

 僕なりに思うのは、安藤さんは「本気」になったんだと思うんです。そして、僕も「プルデンシャルで日本一になる」と本気で思い込みました。人間、「本気」になったら強い。圧倒的な結果を出すためには、「本気」になれば、誰でも圧倒的な結果が出せると思うんです。安藤さんは、「本気」とはどのようなことだと考えていますか?

安藤 本気とは「嘘気(うそき)がないこと」ですね。

金沢 「嘘気がない」とは?

安藤 僕の「レギュラーになる」「早明戦に出る」という言葉は本気ではなかった。つまり、「実現すること」を前提として、逆算して行動していなかったんです。もちろん、日々の練習はそれなりに真面目にやっていたんですけど、本当に「レギュラーの人間より上にいこう」と思って努力していなかった。「レギュラーが怪我してくれて試合に出られたらラッキーだな」くらいの感じだったんです。

 それは「レギュラーになる」「早明戦に出る」という言葉が「嘘」で終わってもいいやと、心のどこかで思っていたということで、全然「本気」ではなかった。「嘘気」だったということです。

金沢 なるほど。

安藤 一方で、「こいつ、僕より下手だな」と思っていたヤツが、いつも「レギュラーになる」と言い続けていて、最終的に本当にレギュラーになったんですよね。彼はレギュラーになることに対して「本気」だった。「レギュラーになる」という言葉を「嘘」にしなかったんです。自分自身の姿と彼の姿を対比できたのは、自分にとって大きな経験でした。

金沢 ああ、僕も同じようなことがありました。体が小さくてずっと補欠だったけれど、黙々と誰よりも練習していた同級生が、大学4年生の大事な試合でレギュラーなって大活躍したんです。

 僕は幸いにも足が速いこともあり、下級生の頃から試合に出場させていただいてましたが、その試合にはほとんど出ることができませんでした。あのときの強烈な「敗北感」から、学んだことは大きかったですね。ああ、「本気」でコツコツやるヤツには勝てないんだな、と。