駅から徒歩10分、ベッドタウンに出店した理由

「店舗の保証金、内装費、ベッドなどの備品、ホームページ作成代、店の宣伝広告費、従業員の求人広告費などで、初期投資は約300万円。会社の失敗で全然お金がなかったから、いろんな人から借りました。常連のお客さんにも声をかけたし。そうやってギリギリの状態でお店を始めたんです」

 彼女が出店した場所は、いわゆるベッドタウン。駅から店舗まで徒歩だと10分程度かかるところだ。端から見れば、お世辞にも良い立地条件とは思えない場所なのだが——。

「周りの駅も含めていろいろ物件を見て歩きました。都心は家賃が高くてライバルも多いし、いろんなトラブルも多いと思ったから、最初から大きな街は外そうと決めてました。埼玉や神奈川でも、中心的な街ではやっぱり既存のお店が多いんです」

 ライバル店が少ない環境を探すなかで、偶然見つけたD市の物件を借りることになる。

「その街には繁華街がなく、『中国エステ』のお店は当時1軒しかありませんでした。ライバル店は駅の東側にあったんですが、私のお店は西側。これなら何とかやっていけるって思ったんです。繁華街じゃないから大儲けはできないかもしれないけど、地元のお客さんを相手にコツコツとやっていけば、少ないながらも安定的な収入が得られるんじゃないかって」

「女のコも私を入れて2、3人くらいにして、1日5万円、月に150万円くらいの売上をコンスタントにあげることができればそれでいいかなって」

 家賃は10万円、光熱費・広告費等の諸経費が20万円。残りの120万のうち半分を自分の稼ぎとして、半分を従業員の人件費にする。そんな計算だった。

「でも、最初の1ヵ月は地元のお客さんすら来てくれなくて、すごく不安になりました。仕方ないから、以前エステ嬢をしていたときの常連さんとか、スナックで働いていたときのお客さんに電話をかけまくって来てもらいました。これでギリギリなんとかなって、それから数ヵ月は月100万円前後の売上が続いて、半年が経った頃から、開店当初の見込みだった売上150万を突破するようになりました」