ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

日本の本質は社会主義国家。資本主義国家の真似をせず、国民性を生かしたアナログな価値を追求する最高級品質のものづくりをなぜ目指さないのか

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第10回】 2012年10月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
2
nextpage

 

日本は資本主義国家の真似をした社会主義国家

 加えて、給料の額も大きな原因です。富士通、日立、NECと言えば、世界屈指の大企業です。しかしながら、社長の年俸は1億円台だと思います。一方、現在、韓国のサムスン電子には取締役が6人おり、彼らの年俸は10億円を超えていると言われています。米国の企業はサムスン電子よりも、はるかに高いと言われています。

 資本主義において、経営者は実績がすべてです。利益を出す責任と大きな権限を持っているはずの世界的な大企業の経営者の給料が年俸1億円台では、死ぬ気で任務を真っ当しようという気にはならないのではないでしょうか。勿論、給与が高ければ必ず能力を発揮できるという保証もありませんが、売り上げの規模と代表取締役社長の給料の金額の関係をグラフで書いてみると、非常に興味深い結果が出てくると思います。

 また、このようなエピソードがあります。この連載の第5回で、韓国の電子政府がうまくいった理由の一つとして、情報通信大臣に2回もIT企業の社長を就任させたからだということをご紹介しました。

 韓国の電子政府を世界一にまで引き上げた盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領はまず、サムスンのチン・デジェ社長を情報通信部の長官に任命しようと考えました。韓国人は公務に就くことを光栄に思っているので、チン社長は大統領の提案に対して、非常に迷いました。なぜなら、韓国の大臣の年俸は1500万円程度、一方、サムスンでの年俸は10億円だからです。また、サムスン電子を辞めると、何十億円というストックオプションがなくなるのも迷いの原因でした。

 悩みぬいた末、チン社長はノ・ムヒョン大統領に断りの連絡を入れました。しかし、大統領は諦めず、サムスングループの李会長に助けを求めました。それに対し、李会長はチン社長を呼んで、「お前のストックオプションは何とかするから、国のために働いてこい」と言いました。チン社長はストックオプションを保障してもらい、情報通信大臣になったのです。

 日本が資本主義国家であれば、これくらい資本主義国家らしいことをやらなければいけないと思います。しかし、日本は資本主義国家の真似をしたがるものの、実態は、国民の意識、社会構造すべてにおいて「社会主義国家」のように映ります。高度経済成長期のただなかの数十年前までは国民全員が幸せであり、社会主義国家で良かったと思います。しかしながら、バブル崩壊を機に、欧米式資本主義を中途半端に持ち込んだことで、今や完全に社会の仕組み、古き良き日本式の企業経営は崩壊してしまっているように見えます。

 少子高齢化が進み、デフレ経済が進行するなか、日本企業は、海外に工場を移し、生産コストを下げることで利益を確保し、グローバル市場で勝ち抜こうとしています。そのベースには、規模の経済という思想があります。しかしそれでは、日本の良さ、国民性を生かすことは難しいのではないでしょうか? 

 また、生産拠点を人件費が安い国に移転し、そこで技術者を養成してしまったら、その国の人はいずれ会社を辞めて自分たちの競合他社に移るか起業して競争者となるのは必至です。現在、このような状況に陥っているのが、日本の家電メーカーなのではないでしょうか。

previous page
2
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

廉 宗淳
[イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。

廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

「廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか」

⇒バックナンバー一覧