日本企業が停滞から脱却するにはどうすればよいのでしょうか。今回も前回に引き続き、実例を挙げながら、一緒に考えていきたいと思います。

自社ハードのうえでしか”動かない”ソフトでは誰も欲しがらない

 佐賀県庁の電子自治体を担当させていただいている筆者が、ハードウエアやソフトウエアを調達するに当たり、現場で感じた日本のIT企業の問題点から、まず、お話ししましょう。

 電子政府や電子自治体を実現するには、情報システムが必要になりますが、情報システムを開発するには、開発言語、データベース、OS、ミドルウエアなどのシステム基盤系のソフトウエアと、その基盤の上で動作する業務用のソフトウエアが必要です。日本のICTベンダー大手には、NTTグループをはじめ、富士通、日立製作所、NECの数社がありますが、いずれも世界的に著名な企業です。

 しかし、世界の顧客の中に、これらの企業が開発し、顧客に提案している「基盤系のソフトウエア」の製品名を知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。しかし一方で、 OSと言えば、マイクロソフトのWindowsシリーズやアップルのiOSを、業務用のアプリケーションソフトウエアと言えばMSOfficeをすぐに思い出すことでしょう。

 たとえば、データを保管して管理するDBMS(データベース管理システム)の種類の一つにRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)があります。富士通は「Symfoware(シンフォウェア)」、日立は「HiRDB」、日本電気は「RIQSⅡ」という自社製品を持っています。また、ミドルウエアに関しては、富士通は「Interstage(インターステージ)」、日立は「Cosminexus(コズミネクサス)」という自社製品を持っています。

 しかし、これらの製品は世界市場ではそれほど知られていません。また、国内においても、同社のハードウエアや業務用プログラムと一緒に納入する付属品のような位置付けであり、そのもの自体が商品として単独で売られることはまれではないでしょうか。

 一方で、RDBMS市場で世界的な大きなシェアを占め、RDBMSと言うと真っ先に思い浮かぶのが、米オラクル社の「Oracle」という会社と同名の製品です。製品名と社名が同名であることを改めて強調しておきます。

 富士通や日立、NECとオラクルの製品の違いは一体どこにあるのでしょうか。以前筆者が関わったある自治体での検討時にあった実話をお話ししましょう。