「緊張で心臓のドキドキが止まらない」「失敗したらどうしようと不安になる」「本番に弱い自分が嫌いだ」、多くの人が持つメンタルの悩みを解決してくれる『刑事(デカ)メンタル』が話題を呼んでいます。刑事生活20年の森透匡さんは、ガサ入れ、犯人確保、張り込み……修羅場という修羅場を潜り抜けてきた元ベテラン警部。絶対に失敗できない重要な局面でも緊張をおさえ、平常心を保つためにはどうしたらよいのでしょうか。「緊張しすぎてしまう」「あがり症だ」という人でも動じないハートを手に入れるための刑事の技術について聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)
「準備不足」だから、緊張して当たり前
──森さんは、世間が注目するような大事件を担当されたこともあると聞きました。「いよいよ明日、犯人を捕まえるぞ!」と作戦を練った日などは、かなり緊張されるのではないでしょうか?
森 透匡(以下、森):ここで逃げられたらシャレにならないので、重要な日の前日は緊張感もピークになります。警部として捜査本部100人を束ねなければいけないこともありましたが、絶対に失敗できないのでプレッシャーも半端なかったですね。
──「緊張」って、取り扱いが難しいですよね。最近は、働き盛りのサラリーマンに「過緊張」で悩む人が多いとよく聞きます。緊張しすぎて不安がおさまらなかったり、うまく喋れなくなってしまったり、家でも仕事モードが抜けずリラックスできなかったりと、気が休まらないんだそうです。とはいえ、仕事をする以上、緊張感ゼロだと気の緩みに繋がりますし……。ちょうどいいバランスで「緊張」を保ち、うまく仕事に活かす方法はないものでしょうか。
森:「失敗したらどうしよう」と不安になる原因の多くは、「準備不足」だと私は思っています。「これ以上できることは何もない」と自分が納得するところまで努力していないからこそ、不安になる。
やるべきことをしっかりとやって、「自分は絶対にできるぞ」という気持ちで挑んでダメだったら、「やることはやったし、しょうがないか」と冷静に思えるけれど、何も準備していなければ当然、不安になりますよね。だって、準備していないのにうまくいくはずないでしょう?
きちんと準備をしていれば「あとはどうにでもなれ」と開き直ることができる。その緊張が「どうしよう」という不安が原因で起こっているのなら、「開き直れるところまで準備してみる」というのを一度やってみたらいいんじゃないでしょうか。
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事 元刑事の人事コンサルタント。警察在籍27年のうち、刑事生活は20年。23歳で巡査部長に昇任し、知能経済犯担当刑事に抜擢。異例のスピードで同期生トップとなる35歳で警部に昇任。多数の凶悪事件、巨悪事件の捜査に従事し、冷静沈着な判断と指揮により事件解決に貢献した元敏腕刑事。また、東日本大震災では広域緊急援助隊の中隊長として福島県に派遣され、福島第一原子力発電所の水素爆発に遭遇しつつも命の危険を顧みず部隊の指揮を執った経験もある。心が折れそうな数々の現場経験から強靭な精神力を培う。現在は大手企業、経営者団体など毎年全国180ヵ所以上で講演・企業研修を行い、これまで7万人以上が聴講した。2020年には大手講師派遣エージェントより全国1万人以上の講師の中から人気No.1講師に選出される。日本テレビ系「月曜から夜ふかし」、読売新聞、日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。