努力の跡が見える準備ノートを持ち歩く

──森さんが刑事時代にやっていた「準備のポイント」はありますか?

:警部として組織を率いる立場のときは、指揮官として動くので、とにかくやることが膨大でした。まずは、捜査員が何人必要でどこに配置して、誰を班長にして……とか、やらなければいけないことを全部ノートに書き出して、ひとつずつ潰していく。完了したら赤線でマーカーを引く。という基本的なところからスタートします。

 そうして、一通り準備を終えたら、さらにもう一度「他にやることはないか?」を考える。その繰り返しですね。「まだないか?」と考えに考え抜いてタスクをこなしていけば、ある程度の納得感はあります。そこまでやれば自信が出てきて「あとはやるだけだ!」と開き直ることができる

 緊張しすぎて悩んでしまうという人におすすめしたいのは、「努力の跡が視覚的に認識できるもの」を手元に置いておく方法「これだけやった」という成果があらわれているものを見ると、自信が湧いてくるんです。私の場合は、その準備ノートだったんですよね。びっしりと赤線が引いてあってボロボロになったノートを見ると、「これだけやったんだから絶対に大丈夫!」と思えるじゃないですか。

「過緊張」「あがり症」でもプレッシャーに負けないための刑事の技術

「運が悪かった」は努力した人だけが言える台詞

──プロフェッショナルの刑事として「ここだけは譲れない」という仕事哲学はありましたか?

とにかく、諦めないことですね。たとえば殺人事件が起こったときに「これはきっと迷宮入りするな」と、私が思ったとします。指揮官がそういう感情になるとね、部下にも伝染するんですよ。だから、どんな苦境に立たされたとしても「絶対に捕まえてやる」という気持ちで挑んでいます。

──全力で取り組んだにもかかわらず、「うまくいかなかった」「失敗してしまった」というパターンもありますよね。

:もちろん。どれだけ頑張っても捕まえられないこともあります。でも、「最後まで絶対に諦めない」と覚悟して挑み、思いつく限りの準備をしたのなら「しょうがないな」と思えるし、感情に振り回されることなく冷静に失敗の理由を分析できる。一生懸命やったけどそれでもダメだった。それなら何が悪かったんだろう? 戦略がよくなかったのか? 調査が足りなかったのか? もっとできることがあったかもしれないと、客観的に判断できる。でも、「これはもう無理だな」と途中から諦めて、準備も中途半端なままで挑んでいたら? やっぱり落ち込むし、自分を責めてしまいますよね。

「今回は運が悪かったな」というのは、死ぬほど努力した人だけが言える台詞です。そう言えるくらい、最後まで諦めず全力を出して頑張ってほしいそうすれば自信がつくし、メンタルも強くなる。そんな思いをこめて、今回の本を書きました。この記事を読んでいる人は、すでに何らかのヒントを得たいと動いている。全力を出して頑張るきっかけをぜひ、本から見つけてほしいですね。

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第1回 1日10秒でメンタルを強くする3つの習慣
第2回 同じ境遇でもストレスがたまらない人がしている3つの習慣

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