ドナルド・トランプ氏が米大統領の座を退いて舞台中央から去れば、国際政治は平穏になると考えていた人々は、厳しい現実に直面してショックを受けた。アラスカ州で会談した米中高官の対立や、ジョー・バイデン米大統領とウラジーミル・プーチン・ロシア大統領の言い争いを見る限り、世界は以前と同様に危機に満ちている。米国とロシアの関係は、ケネディ大統領時代以来最悪の状況にあり、米中関係は、1971年にヘンリー・キッシンジャー氏が訪中した時期以来、最も冷え切っている。そして中国、ロシア両国政府間の関係は、スターリンの死去以来、最も緊密になっている。バイデン氏のチームに課題を突き付けているのは、大国だけではない。首都ワシントンのフォートマクネア陸軍基地の当局者は、同地の施設へのイランによる攻撃が計画されているとの報道を受けて、警備を強化した。北朝鮮は、長距離ミサイルの新たな発射実験に向けた動きを見せているとされる。アフガニスタンでは反政府武装勢力のタリバンが、米軍の撤退後に「イスラム教による統治」を導入する計画を発表した。また、モザンビークでは、過激派組織「イスラム国(ISIS)」と結び付いた民兵グループの大規模攻勢に直面する地元兵士の訓練のため、米国の特殊部隊が到着した。ベラルーシ政府は、国内の民主化運動をほぼ壊滅させた。さらにミャンマー国軍は、国内外からの前例のない規模の抗議に直面しながらも、権力掌握の力を緩める兆しを全く見せていない。