一般的ながんと比べると進行が遅く、余命の判断はとてもむずかしいものでしたが、通院するのが難しくなってきていたので、余命は数か月ではないかと感じていました。

 これまでの闘病生活が長く、何度も手術を繰り返しながら変わりなく過ごされてきたので、もしかしたらE絵さん夫婦は余命をもっと長いと思っているかもしれないという懸念がありました。また、ご主人は障がいを抱えていて人とのコミュニケーションがややむずかしいということもあったので、病状が悪くなってきた今、今後のことについてちゃんと向き合っておふたりの思いを確認しておかなければと思っていました。

亡くなる10日前
医師に語った言葉とは

 でも、すべては私たちの思い過ごしだということが判明しました。

 E絵さんは、ご自分の状況を本当によく理解されていたのです。そうわかったのは、亡くなる10日ほど前のことでした。E絵さんが私にこう言ったのです。

「私、もうそんなに長くないでしょ。もう何もできないから、ここにいるとみなさんにご迷惑をかけちゃう。でも、今、入院したら、ただでさえ、障がいで人と話ができない夫が孤独になってしまう。せめて生きている間、夫の話し相手になれるように、できるだけ家にいたい」 

 夫のために家にいたい―それがE絵さんの最期の望みだったのです。

 彼女のなかでは、いつかこういう日が来ると、わかっていたのです。死に際をどう過ごすかは、誰に言わずともすでに決まっていて、人に伝える必要はなかったのかもしれません。

 ご主人もまた、とても状況をよく理解していました。「もうダメなのはわかっているし、準備はできているよ。僕がどこまでできるかわからないけど、そばについてることはできるから、何かあったら電話するね」と話してくれました。