その苦労は鍛錬か、我慢か
澤:「これは鍛錬だ」と意識してやると、ちゃんと筋肉に効いてくるけれど、我慢でしかなければ、怪我するリスクも出てくる。「今やっていることは辛いけれど、自分にとって鍛錬になっているのか? それとも、ただの我慢なのか?」と自分に問う癖は、つけておいたほうがいい。
川原:同感です。鍛錬と訓練の違いってなんだと思いますか?
澤:その先に未来があるかじゃないですか。我慢の先にあるのは「やっと終わった!」という達成感だけだけれど、鍛錬の先には自信や可能性の広がりがある。未来を感じられるほうを選びたいですよね。
川原:昔の僕は、「ウソ鍛錬」だったのかもしれないですね。毎日耐えていることを鍛錬だと思い込みたかったけれど、心の奥ではずっと我慢していて、本来の自分の力が発揮される場所に行くことを恐れていた。
今、この対談を公開している音声SNS「clubhouse」のような、フラットで偶然性を楽しめる環境では、僕は自分を解放して表現できるし、すごい人とも臆せずに対話を深めることができます。でも、会社員時代の頃は、環境を変えずに頑張り続けるしかないと思い込んでいたんです。
うまくできている先輩を見ては、「自分はあんなふうにはなれない」と落ち込み、苦しんだ挙句、鬱状態になって出社できなくなった時期もありました。今では毎日のようにclubhouseに入り浸って、“水を得た魚”状態になっています(笑)。
澤:鍛練か我慢か、自分で冷静に見極めるのは簡単じゃないし、余裕がないとできないかもしれません。
見極める方法は二つあって、まずは自分で内面を見つめる習慣を持つこと。例えば、瞑想のようなマインドフルネスの時間を意識的につくってみること。
二つ目は、人に聞くこと。同じ環境にいる同僚ではなくて、まったく別世界にいる第三者にメンターになってもらうのがオススメです。
“外の物差し”を持つことで、自己評価の単位が変わることはよくあるんです。例えば、「長さ」で評価される世界で頑張っているのに「自分は人よりも短い。全然、長さが足りない」と悩んでいたとします。でも、“外の物差し”を持ってきた途端に、「長さなんてどうでもいい。あなたは“重さ”で勝負する人ですよ」と見立てが変わることは少なくありません。すると、視界が開けますよね。
川原:それ、よく起こる現象ですね。
澤:「そうか、自分は重さで勝負したらいいのか」と気づいたら、実際に試してみるといいんです。いきなり転職するとか、フルスイングをする必要はなくて、まずはボランティアで、友達の活動を手伝ってみて、少しずつ自信をつけていけばいい。卓巳さんの場合は、環境を変えるきっかけはパートナーの近藤麻理恵さんだったんですよね。
川原:そうです。麻理恵さんとは学生時代に出会い、数年後に再会してから、お付き合いが始まりました。すでに彼女は『人生がときめく片づけの魔法』というミリオンセラーを出し、片づけコンサルタントとして活躍していました。
当時、彼女があまりにも忙しそうだったので、僕も本業のかたわら、手伝うようになったんです。すると、同じ仕事をしているはずなのに、驚くほど力が発揮できて。「そうか、誰かを輝かせるためならここまで頑張れるんだ」と、自分の強みに気づくことができ、独立へ至る流れになりました。
澤:そして今、100%ハッピーな働き方ができているんですよね。ちょっとずつ試しながら、より自信を持てる場所へシフトしていく。
僕も会社員として、とても伸び伸びと働かせてもらいながら、段々と外の世界との接点が増え、「これだけ重心が外に移ったからそろそろかな」と完全にシフトしました。
川原:なかなか行動に移せない人には、なんてアドバイスをしますか?