これから土地購入と新築住宅を建てたいお客様がいた場合、市成さんは最初に「設計図が出来上がるのは半年後です」と伝えます。それから何度もお客様の話を聴き対話する機会をつくります。お客様が生まれてから今日までの人生を振り返り、これからどんな住宅がベストなのか、何が必要なのかを考えていきます。その対話はときにお客様自身の「現在→過去→未来→現在へと心の旅」となり、自分のこれまでの人生にどのような価値があったのか、自分の果たすべき使命・役割とは何か。それを実現するための住まい方とは?等までできるだけ詳しく描き出します。もちろん予算や場所などの条件がありますから、希望することがすべて実現できるとは限りません。ですが、対話を重ねていくうちに、おのずとその優先順位が定まり、市成さんの頭の中にあるイメージとお客様のイメージするものが合致していきます。市成さんはイメージ設計をします。土地探しはそれからでも間に合うというのです。

「もう1つ決めていることがあります。それは価格では勝負しないということ。家は高い買い物ですから、見積金額に100万円、200万円の差が出ることもめずらしくありません。それぞれの設計図書に基づいて積算・見積した金額になっているからです。それを、『他社と比べて高いから負けろ』といわれても一切値引きはしません。私は、設計図書完成までのストーリーからお客様に話をしています。その結果、見積金額が他社より高くても選んで頂きました」とサラリーマン時代を振り返ります。

 消費者が住宅で幸せになってほしいとの思いで、たとえ苦しくても妥協をしない姿勢を貫くがために、2004年50才の決断である欠陥住宅撲滅を目指して以来2008年まで長く苦しい経営難が続きました。「欠陥住宅やリフォーム詐欺から明石市民を守る」活動で忙しい日々を送っていましたが、脱下請宣言の2004年から事務所はずっと赤字続きで終に貯金を食いつぶしてしまい、借入金が増え続けました。

「不思議なことに貯金がゼロになったころから、ようやくクチコミが広がり着実に受注できるようになりました」(市成さん)

 このタイミングを見計らって、市成さんは積極的にインターネットの有料広告を含めたインターネットの活用をスタートしました。

 何年も前の新聞の切り抜きを持って講座や相談会に来られる明石市民やてるりんのブログの愛読者からの受注もめずらしくないそうです。明石市民を対象に講座や相談会を重ねてきた市成さんは、第三者の口コミ伝達者である、インターネットを利用することで、商圏を一気に拡大しました。

「下請けの仕事から手を引いて6年の歳月が経ち、ようやく事業が上向きかけたところで、第3者の口コミ伝達者の役割を担う専門家ポータルサイトをはじめとする積極的なインターネットの活用を始めましたが、これでよかったのだと思います。私は時間をかけて自分の強みを熟成させたのです。最初に強みを見極め、覚悟を持ってそれに十分な時間を使い、強みが出来始めたところで、口コミを拡大する為に有料の専門家ポータルサイトに登録した。もし強みをしっかり見極めないで、それを強化することもしないで、最初から広告だけに頼っていたら、今の成功はなかったような気がします」(市成さん)

 住宅の新築やリフォームは、個人の私的内面に踏み込まざるを得ないビジネスです。永きに渡り草の根の活動を続けてきた市成さんの人柄とポリシーを見込んで依頼を決めたお客様とは、最初からスムーズに心が通いあうことでしょう。

 太陽のような晴れ晴れとした笑顔を輝かせる市成さんのブログの最後の署名はいつも「情熱てるりん」で締めくくっています。そこには、明石という地域に特化したクチコミで足元をしっかり固めた喜びがあふれています。