市成さんは48歳でサラリーマン生活に終止符を打って起業。そこで直面したのが建築士の名義貸しや、住宅購入者に実態のない工事監理で欠陥住宅を平気で販売している住宅業界の知られざる裏面でした。

 住宅の新築やリフォームのビジネスには、住宅・不動産会社や工務店以外に建築士事務所が介在します。けれど実際には、施主から建築計画・設計を持ち込まれる建築士事務所はごく少数で、大半は住宅・不動産会社や工務店から設計図面の作成や確認申請の代願業務を受注する建築士事務所であり、そうした下請け業務においてはどうしても住宅・不動産会社や工務店側の利益を優先するのが常です。

 正義感の強い市成さんには消費者のために最善でない業務をおこなうことに耐えられませんでした。独立から2年後の平成2004年2月、50才の誕生日に市成さんは、明石から「欠陥住宅撲滅運動」を立ち上げました。

 住宅の調査診断、新築・中古住宅の購入判定調査、新築・リフォームの設計・工事監理、欠陥住宅の鑑定業務等々を、消費者側に立ってサービスする建築士に徹するのです。住宅に欠陥があるので調査をして販売会社に意見書を書いてほしい、リフォームの見積や工事が適正かどうかで悩んでいる消費者の相談に積極的に取り組み、依頼があれば住宅・不動産会社や工務店・リフォーム業者と交渉もします。

「ところが、多くの消費者にとって住宅を購入する際の相談相手は住宅・不動産会社や工務店であり、建築士事務所の建築士にお金を払って意見を聴こうとか相談しようという考えはなきに等しいのが、2004年当時の状況でした。したがってなかなかビジネスにはなりませんでした」と市成さんは当時を振り返ります。

 その年の9月に、西明石で初めて「欠陥住宅撲滅セミナー」をおこないました。11月には、明石市主催の「ゆうゆう塾」でセミナーを開く機会を得て、5ヵ月間にわたって講演をしました。また、自らにニックネーム「てるりん」と名付けて「てるりんの住まいる講座」「てるりんの住まいる相談会」等を開催しました。明石市内で毎月10万部発行している「ミニコミあかし」誌が毎月告知を掲載してくれる支援もあり、講座・相談会の存在は次第に明石市民に知られるようになっていきました。

 参加者も増え、個別の具体的な相談をする人も現れ始めましたが、それが市成さんの顧客となるまでにはなかなか至りません。

 それでも、地道な活動に注目してくれる人もいて、2005年1月に姫路のFM21Genkiに出演したのを皮切りに、5月には朝日放送のテレビ番組「おはよう朝日です」に出演するチャンスもめぐってきました。さらに朝日新聞・読売新聞・神戸新聞・建通新聞や神戸市のFMわいわいや三木市役所内のエフエムみっきい、明石ケーブルTVにも登場しました。

 市成さんは「おはよう朝日です」で、住宅リフォーム詐欺の問題を取り上げ、消費者が悪徳リフォーム業者にだまされないようにする方法を話しました。

 すると、このテレビ番組を見た人から「おばあちゃんがリフォーム会社にかなりのお金を払ったようなのだが、工事内容と金額が適正かどうか調査してほしい」という依頼が市成さんに舞い込みました。