すべての事業は、常に前向きな実験の連続

 いまさら言うまでもなく、すべての事業は常に前向きな実験の連続です。

 本来この新規事業には、前澤氏より前に、このビジネスに必須の「生産背景」をすでに持っている、既存のスーツ販売業を生業としている企業が着手すべきだったと思います。

 しかし既存の勢力は、往々にして今の自分たちのやり方を否定するように見えるやり方には、うまくいかない難しさの理由を挙げて、手を出してこないものです。

 何よりもIT技術によって、顧客が今よりも便利にスーツを購入できる状況をイメージできなかったのでしょう。ニトリが自ら生産に乗り出す前の、家具小売業界も全く同じ状態だったと思います。

 前澤氏の手は離れましたが、現在、この事業を継続している株式会社ZOZOには「羹(あつもの)に懲りてなますを吹いて」しまわないように、執念をもって課題に取り組みこのビジネスを開花させていただきたいものです。

《Point》
必要な組織能力を無視した「神がかり」に注意。
(1)自社の事業を支える強みは、意外に適切に捉えられていないことが多い。調子に乗っている時、自身が「神がかり」状態かもしれないとの想いが頭をよぎったら、一度、頭を冷やす。
(2)「虎は竹藪(自らのテリトリー)を出ない」。ただし自身の竹藪は何かをわかった上で一歩を踏み出す時には、新たな強みを体得することにつながる。