時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。好評につき発売6日で大増刷が決定! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。
バリュー・デリバリー・プロセスを常に磨き続ける
前回で紹介した内容は、トヨタで行われていることの、ごく一部を取り上げて解説しただけですが、これらからトヨタは何を目指して取り組んでいるというイメージを抱かれたでしょうか。
トヨタは、自動車という製品を、市場の変化に連動して届けることができる、ムダなく柔軟なプロセス、今風に言えば「バリュー・デリバリー・プロセスを、エンドレスに最適化に向けて常に磨き続け、進化を続けるカイゼンに日々取り組んでいる」のです。
多くの「ものづくり」の現場では、計画に対して稼働率が100%であれば「良かった、上出来」となり、製造管理部門も問題なしと経営側に報告を行うでしょう。
しかしトヨタの自動車の組み立て工場では、もし稼働率が100%になった場合は「おかしい、どこかにムダがある」と考えます。
たとえば、工程間のラインのバランスに偏りがあっても、工程内の在庫が過剰にあると、それは工程間のダンパー、クッション機能となり、バランスの悪さ、つまりムリ・ムラ・ムダの一つ、ムラが顕在化されずに、生産ラインは一見、粛々と問題なく動いているように見えてしまいます。
そこでトヨタの現場では稼働率95%を超えるくらいがちょうどいいと考え、常に、どこかでムダが顕在化し、そこに対して手が打たれている状態を理想とします。