労働人口の減少により、鉄道の保守作業の効率化は大きな課題となっている。こうした中でJR西日本は4月、鉄道の電気工事作業を大幅に省人化する車両「ブラケットハンドリング車」を開発したと発表した。その詳細について解説する。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
保守作業の社員数は
10年で2割以上も減少
大都市圏の輸送を支える鉄道。その安全確保と安定運行に欠かせないのが、日々のメンテナンスだ。しかし、労働人口の減少により人員の確保は年々、難しくなっており、JR西日本の場合、保守作業に従事する協力会社の社員数は2008年から2018年の10年間で23%も減少しているという。
こうした状況を改善しようとJR西日本はコロナ禍前の2019年10月、異例の終電繰り上げの実施を発表。その後のコロナ禍を受けてJR東日本や東急電鉄、阪急電鉄など大手私鉄も追随し、2021年3月のダイヤ改正で、一斉に終電時刻を繰り上げた。
レールや架線などのメンテナンスや設備の交換、ホームドアなどの設置作業は主に終電後に行われるが、終電と初電の間合い時間は最大4時間程度であり、工事を毎日少しずつ進めざるを得ないことから、どうしても作業効率は下がってしまう。そこで終電を30分程度繰り上げることで作業時間を確保するとともに、保守作業の機械化を進めることで作業効率の向上と省力化を進めようというのが狙いである。
そんな中、JR西日本は4月7日、国内鉄道業界で初めてロボットアームを搭載した鉄道電気工事用車両「ブラケットハンドリング車」を開発したと発表した。この車両の開発により、夜間作業はどれほど変わるのか。開発を担当したJR西日本鉄道本部電気部電気技術室の木村秀夫室長に話を聞いた。