東京や大阪に発出されている緊急事態宣言が延長されるなど、コロナ禍は依然として収まる様子を見せない。閉塞感やストレスの限界を感じている人も多いだろう。
そんななか、『ゼロ秒思考』(2013年、ダイヤモンド社)という本が売れ続けている。発売から7年となる2020年度には、過去5年で最多の売り上げを叩き出すという異例のロングセラーぶりで、累計では30万部を突破した。
ペンとA4用紙だけで思考のスピードと質を飛躍的に高めることができる「メモ書き」のノウハウを記した1冊なのだが、SNSでは「ストレスを解消できた」「誰もが実践するべき」とも絶賛されている。
本稿では『ゼロ秒思考』から特別に一部を抜粋・編集し、「メモ書き」をすると心がスッキリする理由について解説する。
「メモ書き」は遠慮せずストレートに書く
思いついたこと、気になること、疑問点、次にやるべきこと、自分の成長課題、腹が立って許せないことなど、頭に浮かんだことは何でも書く。頭に浮かんだそのまま、フレーズを書き留める。
人に見せるものではないので、タイトルでも本文でも、嫌いな人の名前もぼかさずそのまま書く。すべて具体的に書けば書くほど、焦点がぶれずに書ける。遠慮は禁物だ。ストレートに書くことで、ゴミを部屋の外に掃き出すようにすっきりする。心の中を整理整頓し、自分が何を悩んでいるのかはっきり見すえることで、悩みも大幅に減る。
心中の汚泥が外へと出ていく
嫌なこと、気になること、腹が立つがどうしたらいいかわからないことは、我々をとても苦しめる。最悪だった光景が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。ネガティブなことであればあるほど、そういうことを考える自分が嫌で考えないように努力する。努力しても嫌なものは嫌なので、またふとした瞬間に浮かんでくる。消しゴムで消してしまいたい。でも、頭の中を消去することはこれまではできなかった(本当にひどい状況に関して、我々の脳は記憶を消してしまうことがある。ただ、本当に消えることはなく深い傷が残るので、トラウマとして折にふれ我々の行動を束縛する)。
ところが、A4用紙に1件1ページで、しかも1分でその嫌なことを書き出していくと、そのたびに消しゴムで本当に消していくように、心の傷が少しずつ改善していく。心の悩み・痛みが減っていく。心の中の汚泥が外に出ていく感じだ。
愚痴を言うよりも紙に書く方がスッキリする
考えてはいけないと思いつつどうしても考えてしまうことに対し、逆にはっきりと嫌な相手の名前も含めて目の前の紙に書き付けることで、不思議なほど自分の気持ちがおさまっていく。友達に3時間愚痴を言うよりも効果がある。
なぜなら、相手の名前とともに、何が嫌なのか、どうひどいのか、相手がどれほど悪者なのか、どうして自分は反論できなかったのか、どうやって見返してやるのか、目の前の紙に具体的に書くことで、自分の気持ちをしっかりと見つめることができるからだ。それによって、ただ話しているのと違って整理ができ、堂々巡りがなくなり、気持ちの整理が早まるからだ。書かなければ10回でも繰り返していた相手の嫌な点、絶対許せない点を紙の上で確定させ、前に進むことができる。
一番の親友にも言えない、心の奥のどす黒い部分も、一人っきりで目の前の紙になら書き出すことができる。「あなたって、なんて人なの⁉」と思われる心配がないからだ。自分の気持ちに思いっきり正直になれる。
たった1時間で自分を客観視できるようになる
メモに全部ぶちまけた後、それらのメモを見ながらさらに思い浮かぶこと、やっぱりどうしても許せないこと、そいつの最悪で一番嫌なところ、などを新たにメモを書いていく。腹が本当に立った時は、いつまでも書き続ければよい。何百ページでも。
やってみるとわかるが、実はその必要がない。多分20~30ページも書けば、もうあまり書けないことに気づく。気づく頃には、自分の気持ちと状況をある程度客観視できるようになり、かなり落ち着いてくる。
そうなると、自分のどこが悪かったのか気づき始めたり、これからどうすべきか少しだが前向きな気持ちを持ち始めたりする。ここまで、1ページ1分で書いていれば30分程度だ。どんなに時間をかけても1時間もすると、ずいぶん違う気持ちになれる。