東京や大阪に発出されている緊急事態宣言が延長されるなど、コロナ禍は依然として収まる様子を見せない。閉塞感やストレスの限界を感じている人も多いだろう。
そんななか、『ゼロ秒思考』(2013年、ダイヤモンド社)という本が売れ続けている。発売から10年を超える異例のロングセラーを続け、累計では30万部を突破した。
ペンとA4用紙だけで思考のスピードと質を飛躍的に高めることができる「メモ書き」のノウハウを記した1冊なのだが、SNSでは「ストレスを解消できた」「誰もが実践するべき」とも絶賛されている。
本稿では『ゼロ秒思考』から特別に一部を抜粋・編集し、「メモ書き」の具体的なフォーマットを紹介する。(初出:2021年5月22日)
「メモ書き」は頭をほぐす柔軟対応
「メモ書き」は、元々は私がマッキンゼーに入社した際、インタビューの仕方、分析のやり方、チームマネジメント等で役立つアドバイスを先輩から多数いただき、それを漏らさず書き留めよう、書き留めたうえでしっかり理解し自分の物としよう、というプロセスから生まれた。
「メモ書き」は、こわばった頭をほぐす格好の柔軟体操であり、頭を鍛える手軽な練習方法だ。頭に浮かぶ疑問、アイデアを即座に書き留めることで、頭がどんどん動くようになり、気持ちも整理されるようになる。自意識にとらわれ悩むことがなくなっていく。「メモ書き」により、誰でも、この境地にかなり早く到達できる。自分でも驚くほど頭の回転が速くなる。
1ページ1分、1日10ページが原則
具体的には、A4用紙を横置きにし、1件1ページで、1ページに4~6行、各行20~30字、1ページを1分以内、毎日10ページ書く。したがって、毎日10分だけメモを書く。
こんな単純なものでいいのか、と思われるかもしれないが、簡単で気軽にできるところがポイントだ。
各行20~30字書くのがオススメ
各行は短すぎると具体性が不足し、頭の中のもやもやを言語化する練習にならないので、20~30字で書くことをお勧めしている。そのくらいあれば、ある程度十分な内容になる。
1~2行しか出てこない人もいるが、心配はいらない。すぐ書けるようになるので、少しだけ頑張ってほしい。私がメモ書きを教える際には、最初は時計を見ながら1分がどのくらいの長さなのか、どのくらい急がないといけないのか理解してもらう。そうすると10ページも書かないうちに、1ページ1分以内に書けるようになるので驚かれる。文字量そのものが増えていく。
「メモ書き」のフォーマットが効果的なわけ
本文を4~6行書く、と言うのには理由がある。思いついたタイトルに対して頭に浮かぶことを書き出すと、だいたいは4行以上になる。3行で終わることは滅多にない。日本語では三段論法ではなく起承転結がしっくりくるので、どうしても4行目が欲しくなるのかもしれないと勝手に考えている。
では、6行までと言うのはなぜか。それは、頭の中を常に整理しておくためだ。だらだらと書き続けると、大事なことも大事でないことも書き連ねてしまう。レベルの違うこともどんどん書いていってしまう。だから、もっと書きたくても、最大でも6行までにすることをお勧めしている。
タイトルの書き方
タイトル(=メモに書くテーマ)は、何でもよい。頭に浮かんだまま躊躇せずに書く。たとえば、こんな感じになる。
〈仕事に関するタイトル〉
・どうすれば仕事のスピードを上げられるか?
・仕事がうまくできる時、できない時
・どういう時、仕事が中断してしまうのか?
・どうやって企画書を素早くまとめるか?
・今日明日で仕上げてしまうこと
・来週の会議に向けた準備
このように、頭に浮かぶ言葉そのものをタイトルにする。むずかしく考えることは何もない。むずかしく考えてはいけない。人に見せるものでもないので、頭に浮かんだフレーズをそのままA4用紙の左上にさっと書いてしまう。
3週間から1ヵ月でアウトプットが止まらなくなる
メモ書きを3週間から1ヵ月続けると、頭にどんどん言葉が浮かぶようになる。メモに書くよりも早く、言葉が湧いてくる。1ヵ月前にはもやもやとしていたものが、言葉が明確に浮かび、アイデアが続々と出てくるようになる。頭の速さに手の動きがついていけず、もどかしく思いながらアウトプットし続けることになる。
さらに数ヵ月続けると、瞬間的に全体像が見えるようになり、「ゼロ秒思考」に近づいていく。ものによっては、瞬間的に問題点が見え、課題が整理でき、答えが見えてくる。この変化には、性別、年齢、経験を問わない。