東京や大阪に発出されている緊急事態宣言が延長されるなど、コロナ禍は依然として収まる様子を見せない。閉塞感やストレスの限界を感じている人も多いだろう。
そんななか、『ゼロ秒思考』(2013年、ダイヤモンド社)という本が売れ続けている。発売から7年となる2020年度には、過去5年で最多の売り上げを叩き出すという異例のロングセラーぶりで、累計では30万部を突破した。
ペンとA4用紙だけで思考のスピードと質を飛躍的に高めることができる「メモ書き」のノウハウを記した1冊なのだが、SNSでは「ストレスを解消できた」「誰もが実践するべき」とも絶賛されている。
同書がコロナ禍に人気を集めている理由を改めて探ってみた。
感情をアウトプットする場がなくなり、ストレスは最高潮に
新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活や働き方は大きく変化した。旅行や外食を今までのように自由に楽しむことができなくなり、テレワークの導入で職場へ足を運ぶ回数は減った。プライベートと仕事の両面で、外出の機会が以前より少なくなったことで、他者とのコミュニケーションは減少している。
友人とのビデオ通話やオンライン会議といった代替手段はあるものの、対面の会話が減ることで「人と会えていない」という孤独感が高まることは避けられない。また、これまで他者に対して直接アウトプットしていた自分の考えや感情が行き場を失い、心にモヤモヤとした気持ちが残りやすくなった。
実際、リクルートキャリア(東京都)が昨年9月に実施した調査によると、テレワーク経験者の約6割が「テレワーク前にはなかったストレス」を実感し、そのうち65%強の人が、調査時点でストレスを解消できていなかったという。
さらには、ストレスをためこんでしまい、精神的なトラブルに陥る人が増加傾向にある。健康相談やメンタルカウンセリングなどの健康支援サービスを提供するティーペック(東京都)によると、昨年、「死にたい」など自傷や他害をほのめかす相談が急増し、特に9、10月は前年比で1.7倍にまで相談件数が上昇した。
「メモ書き」がストレスを解消する切り札になる
人と接する機会が少ない自粛生活が長引く中、ストレスや不安を抱えこみ、精神の健康を害するリスクが高まっていることがわかる。そのため、ストレスの原因をしっかりと把握し、心にためこまずに解消する方法を見つけることが極めて重要になる。その切り札となるメソッドが、『ゼロ秒思考』(ダイヤモンド社、赤羽雄二著)で紹介されている「メモ書き」だ。
人目を気にせず言葉を吐き出すと、ストレスが消えていく
『ゼロ秒思考』の「メモ書き」とは、クリアな思考を可能にするための極めてシンプルな方法で、マッキンゼーで長年活躍した赤羽氏が、試行錯誤の末に開発したものだ。
「メモ書き」に必要な道具は、ペンとA4用紙の裏紙のみ。「なぜストレスがたまっているのか」や「今日うれしかったこと」などとテーマを決めたうえで、そのテーマに沿って、頭に浮かんだ言葉をひたすら書いていくだけでいい。
メモは他の誰かに見せるものではなく、人目を気にせずに遠慮なく言葉を吐き出すことができるので、書き続けるうちに自分の心や思考が整理され、ストレスが消えていくという。いつどこにいても、紙とペンさえあれば実践できる。