NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。
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前回は本コラムの初回であったこともあり、私と高祖父の渋沢栄一との「出会い」を美しく描きました。それは現在からの視点を持って、20年前のことを振り返ったからです。今回は、当時の実態を、より正確に示す話になります。
20代半ばから30代まで私は米系投資銀行やヘッジファンドに勤めていました。親戚の集まりの席で(お酒が入ると特に調子が良くなる)父方の叔父からよく注意されたことがありました。
「昔には渋沢家には家訓というものがあってな。そこには政治や株をやっちゃいかんと書いてあるんだぞ」と。
自分は特に政治家志望があったわけではなく、「株をやる」というイメージもなかったのですが、何回も聞かされていたことなので少々気になっていました。
そして、40歳になった自分が会社を興すことをきっかけに、本当に家訓が存在しているのか、父に聞いてみました。「あったかもしれないなぁ」という呑気な返事でした。