コロナ禍では、自宅学習の重要性がますます高まり、児童書・学習参考書の売り上げが急増した。
なかでも異例に売れ続けているのが、『東大教授がおしえる やばい日本史』だ。マンガやイラストを多用して、勉強が苦手な子どもでも「楽しみながら学べる」と話題になり、シリーズの『やばい世界史』とあわせて50万部を突破。発刊から2年をへてなお、重版のペースが落ちないロングセラーとなっている。
今回、『やばい日本史』を監修した歴史学者の本郷和人氏(東京大学史料編纂所教授)に、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』を刊行した加藤紀子氏が、教育や子育てについて話を聞いた。東大教授が語る勉強の極意とは?(構成:小川晶子、写真:山口真由子)。
※対談前回「東大教授が語る「愚者」と「賢者」の歴史の見方」はコチラ。
「日本史上最もやばい人物」第3位:土方歳三
加藤紀子(以下、加藤) 『やばい日本史』では、歴史人物の「すごい」と「やばい」を両面から紹介しています。「すごさ」だけでなく、「やばさ」を知ると、不思議と偉人が身近に感じられ、興味がわきますね。今回は、本郷先生が考える「日本史上最もやばい人物ベスト3」を教えていただけますか?
本郷和人(以下、本郷) 「やばい」の定義が難しいですが、ここでは、いろんな意味ですごい人物という意味で選びました。
3位からいきましょう。土方歳三です。司馬遼太郎が『燃えよ剣』で一躍有名にした、新選組の実質的リーダーですね。組織づくりがうまくて、最盛期には200人ものメンバーを率いていました。
土方のことを勉強すると、組織のあり方を考えさせられます。土方は幕府のために最後の最後まで戦いました。
「日本史上最もやばい人物」第2位:坂本龍馬
本郷 2位は坂本龍馬です。土方とともに時代の転換期に活躍しました。土方を「時代に取り残された人」と考えると、坂本龍馬は「時代を切り拓いていった人」です。
加藤 どちらも人気がありますね。
本郷 やはり面白いし、心をつかむんですよね。土方歳三はイケメンなのもポイント高いです。誰が見てもかっこいい。
加藤 『やばい日本史』の中では、土方歳三がモテモテだった話がありましたね。親戚にモテ自慢の手紙を送ったのが残っているのだとか……。坂本龍馬はどんなところが魅力ですか。
本郷 龍馬は自由を感じさせる人なんです。型にはまらない、自由な人間。新しいものも柔軟に取り入れ、頭のカタイ武士たちを動かしていきました。
龍馬が西郷隆盛と桂小五郎の間をとりもって「薩長同盟」を成立させたことにより、倒幕派がパワーアップして「大政奉還」につながっていくわけです。
坂本龍馬と土方歳三は、幕末の激動の時代のオモテとウラのような関係です。
幕末はやはり面白いですね。でも、実際にその時代にはいたくない。刀を差したヤンキーがそのへんをウロウロしているなんて怖すぎるでしょう(笑)。『やばい日本史』は面白おかしく書いているけど、本当はものすごく物騒な時代です。