周りを見渡すと、不機嫌な表情を浮かべている高齢者が、なんと多いことか。社会に、政治に、隣人に、そして伴侶に、さらには飲食店の店員にさえ、不満をぶつけたりする光景に出くわすこともある。かつて一流企業に勤めていたとか、どこそこの会社の部長だったとか、そんなことは現役を退いたら関係なくなる。何歳になろうと、人生を楽しみ、人生を謳歌すべき。どんな肩書きも外して、『死ぬまで上機嫌。』がいちばんいいのだ。
人生は考え方次第で、上機嫌にも、不機嫌にもなる。嫌な思いをしたとしても、「ま、いいか」「それがどうした」「人それぞれ」と思えば、万事解決。どんな状況を目の当たりにしても、「こういうこともあるだろう」と鷹揚に受け入れられる自分でいたい。『島耕作』シリーズ、『黄昏流星群』『人間交差点』など、数々のヒット作を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏が「そのとき」が来るまで、人生を思う存分まっとうする上機嫌な生き方、心のありようを指南する。(こちらは2020年11月20日付け記事を再掲載したものです)

漫画家・弘兼憲史が教える<br />ダメな年寄りにならない方法Photo: Adobe Stock

ダメな年寄りの振り見て我が振り直せ

僕たち高齢者が快適に生きるためのキーワードは「謙虚」、ということです。

今さら小さな虚栄心を満たすために威張ったり、上からものをいったりしても、なんの得にもなりません。

嫌われ、疎んじられるのがオチです。

古くから「実るほど頭を垂れる稲穂かな」といわれます。

稲が成長して実が入ると、重さによって実の部分が垂れ下がってくる。

その様子になぞらえて、学識や人徳が深まるほど謙虚になること、あるいは、その戒めとして使われる言葉ですね。

僕は仕事柄、雑誌・ラジオの取材や食事会などで、経営者や政治家など社会的地位が高い人にたくさんお目にかかってきました。

そうやって実際に僕が見聞きしてきた範囲でも、社会的地位がある偉い人ほど、謙虚な態度を取ります。

会話している途中でも、店員さんに「お願いします」「ありがとうございます」などと丁寧な言葉遣いをしている姿を頻繁に目にするのです。

偉い人であればなるほど、謙虚な態度を取ったときにギャップを感じさせます。

「あの人、全然偉そうにしていない。なんて腰が低いんだろう」

このように恐縮しつつも好感度が上がり、ますます株が上がります。

「あの人、本当に腰が低くていい人だったよ」なんていうふうに、口コミで評判も広がることでしょう。

もう、謙虚な振る舞いには得しかありません。

反対に、年を取って横暴さと傍若無人さに拍車がかかる人は多いです。

新型コロナウイルスの感染が拡大する前ですが、僕は仕事でファミレスをよく利用していました。

すると高齢者夫婦、その子どもや孫たちとの家族連れが食事をしているシーンをよく見かけました。

総じて息子世代は「○○をお願いします」などと丁寧に話しているのに、高齢男性の場合、「オレは客なんだ」といわんばかりの態度で「水くれ!」「おい、お姉さん!」などと上から目線の命令口調で、店員さんに接する姿が目立つのです。

また、若い女性の店員さんに、なれなれしく接している高齢者の姿も目撃します。

顔見知りの関係で軽い雑談をするくらいならいいのですが、明らかに店員さんの仕事の邪魔をしてまで、つきまとっているケースさえあります。

きっと家庭では誰からも相手にされず、お客としてにこやかに応対してくれる店員さんに甘えているのでしょう。

傍目から見ると、ただの迷惑なジジイです。

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