確かに会社は窮屈なところだし、仕事は面倒くさいものかもしれません。だけど、やっぱり生きていくためには嫌でもなんでも仕事をしなくてはならない。となると、給料は我慢料だと割り切って心を無にして働くか、仕事にそれなりの意義や面白みを見いだして働くか、二つに一つしかありません。

 どうせ働くなら誰しも楽しく仕事をしたいと思うのでしょうが、世間には「好きな仕事に就ける人なんて、ほんの一握りの才能に恵まれた人か運の良い人だけ」という半ば常識化した思い込みみたいなものがあります。そんなふうに考えると、好きなことを仕事にできていない自分がなんだかハズレくじを引いてしまったような気がして、やる気も夢もしぼんでしまいます。「ちょっとくらい頑張ったところで、どうせ運も才能もないから報われないだろうな……」、一度自分の中にそんなイメージが出来上がってしまうと、恐ろしいことに本当にそうなってしまうことがけっこうあるんですね。

 でも、実際のところは違います。好きな仕事に就けている人たちは、みんなが最初から好きな仕事を見つけてそれを目指したというわけではありません。ある統計によれば、それぞれの仕事のフィールドで活躍している人の9割以上が、最初からその仕事を好きだったわけではないという結果も出ています。みんなやっているうちにだんだんとその仕事が好きになっていっただけなんです。

入社して初めて任された在庫管理
一人倉庫の中で考えたこと

 ちょっとだけ私の経験について話をさせてください。実は、私は京都から上京したときに一度、都心のとあるレディース・アパレルメーカーに勤務していたことがありました。営業の世界に飛び込む前のことです。

 アパレルというと華やかな職場を連想するかもしれませんが、入社当日に私が連れて行かれたのは窓一つない薄暗い倉庫でした。そこには「キャリアもの」といわれる前シーズンの返品や売れ残りが、雑然とポールにつるされて並んでいました。何人もの営業マンの手から手へと渡り歩いているうちにビニールのカバーはすっかりホコリまみれのボロボロで、とても新品の洋服には見えません。私に与えられたのはそこに何百とある商品全ての品番を覚えて、品番ごとに商品を分類しそろえていくという、いわゆる在庫管理の現場仕事でした。

 前任者から大まかな説明を受け、だだっ広い倉庫に一人残されて在庫の山を見渡しながら、今日からこれを全部片付けていかなければならないのかと考えると、思わずため息が出そうになりました。