早急にアルバイトの削減に着手すること

 ヒカリはトイレの鍵をかけ、ポケットから損益計算書を取り出すと、もういちど猪木のコメントに目を通した。次第に、この店が置かれた状況の深刻さがわかってきた。そこには、こんなことが書かれていた。

〈人件費が売上高に対して40%を超えている。これを30%に抑える必要がある。明日までに、アルバイトの削減計画書作成のこと〉

 これってリストラ?ヒカリは絶望的な思いになった。管理会計を学ぶために2週間この店に通ったのに、自分は何も感じなかったのだ。たしかにお店は流行っているとは言いがたい。だが、そこまで経営状態が悪いなんて、思ってもみなかった。

このまま知らなかったふりをして、クラークシップをやめてしまっていいものか。ヒカリの心にはじめて葛藤が芽生えた。

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