やりたい目標は完璧である必要はない
キム そもそも、やりたいことというのは、そう簡単に見つかるものではないような気がするんです。簡単に見つかった気になっても困る。なぜなら、違うかもしれないから。だからこそ、いろんな体験をしていく中で、いろんな視点を手に入れたり、自らを成長させていくことが重要になるわけですよね。その結果として、同じ風景でも見え方がまったく違ってくる。やりたいことは、いずれ見えてくるんです。だから、この点については焦らないことが重要だと思います。
ただ、村上さんがそうであったように、意識的にやりたいことに近づくこともできると思っています。どの場面においても、常に自分と向き合う。自分はなぜ生きているのか、何をやりたいのか、自分を追求する気持ちを、すべての瞬間において、持つ。それは、極めて有効だと思います。
そして目標が決まったら、それを常に意識し続ける。目標が完璧である必要はないんです。それこそ明日、変わってもいい。でも、自分のいまこの瞬間をどこの方向に向けさせるかということについては、やっぱり最終的に自分が確認をして、目標設定をして、それに対して向かっていかないと、モチベーションはなかなか出せるものではないと思うんです。
やりたいこと探しに焦る必要はないんですが、常にそれを自問する姿勢というのは、自分に対する、ある意味信頼にもつながると思います。それは、自分の将来の可能性に対する、自分としての最低限のケアではないかと。
村上 日本では、いろんな体験ができる機会が少ないという印象があります。例えば、私は経営者になったわけですが、経営者をやってみようと思えたのは、身近に偶然、経営者だった二人の祖父がいたから、というのも大きいんです。一般的に生活をしていると、なかなか経営者と会う機会なんてない。大学4年になるまで、会社の社長と会ったことがない、なんて人も、もしかするといるかもしれません。そうした、閉ざされた環境に、学校自体がなってしまっているというのも、問題だと思います。
キム ロールモデルがなかったところはありますね。だから、村上さんのような若い起業家がもっともっとフィーチャーされて、こういう軌跡をたどれば同じような道が歩めるかもしれないんだ、ということに多くの人が気づくことができたら、とても意味があります。事業はまったく違っていたとしても、そこにある原理的な部分、共通する本質的な部分は読み取れると思うんです。
それこそ、自分に当てはめて考えると、どんな実行力があり、自分の24時間を、どんなことを心がけ、どんな行動を起こしていくべきか、とシミュレーションをし、単なる憧れではなく自ら村上さんの経験を活かしていこうと主体的に村上さんを知ろうとすれば、若い人には得るものはとても多いと思いますね。