アイデアが「降ってくる人」と「ぜんぜん思いつかない人」を分ける条件Photo: Adobe Stock

集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──

私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。

「クリエイティビティ」を取り戻す

発想力が落ちている感覚がある
自宅での仕事ではアイデアが出てこない

 そんな悩みも多く聞くようになりました。五感刺激などのゆらぎがないと、クリエイティビティは落ちていきます。

 ここでは、2つの課題に絞って整理しておきましょう。

 1つは、環境の課題です。

 ほとんど家を出ずに同じ人工物に囲まれていてゆらぎがなかったり、姿勢が固定化されたりすることで思考パターンが画一化するのが原因です。

 もうひとつは、コミュニケーションの課題です。

 リモート会議ばかりが続き、聴覚と視覚が「8:2」くらいの会話が続いたり、テレカンの効率運用によるアジェンダ通りで予定調和的な会議が増えているのが原因です。

 どちらの課題も、身に覚えがあるのではないでしょうか。特に、クリエイティブワーカー系の人であれば、誰しもがうなずく内容でしょう。

どんな条件で
人はクリエイティブになるのか?

 それらの解決策を紹介する前に、「アイデアが出るとき」がどのような状態なのかを見ていきましょう。

「セレンディピティ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 セレンディピティとは、「何か特定のものを探しているときに、それとは別の価値のものを偶然見つけること」と定義されています。この「別の価値のもの」がアイデアです。

 これだけを聞くと、アイデアとは、突然バッタリと出会うもののように思えるかもしれませんが、少しニュアンスが違います。

 まったくゼロであるところからイチのアイデアが降ってくるのではなく、複数の既知の思考が結びつき、新しい発想や発見につながるのです。

 つまり、自分がこれまでインプットしてきた知識や知恵があった上で、そこに外からの他の知識が「掛け算されたとき」に、セレンディピティは起こるということです。

 ここで大事になってくるのは、「深い集中で1つのことを考えておくこと」と、「掛け算しようと思ってするのではない」という2つのことです。

 誰もが思いつくようなことを掛け算しても、普通のアイデアにしかなりません。

 一見、結びつきそうにないことが掛け算されることが重要なのであり、それを実現させる思考こそが、本書のキーワードでもある「直感の脳」を活性化させることなのです。

「理性の脳」から「直感の脳」に切り替わるときには、「大局観の脳」を経由します。

「大局観」とは、具体と抽象を行き来するときのように、俯瞰で物事を捉える状態です。

 この切り替えが上手にできると、アイデアが出る確率が高まります。

 しかし、多くの人は仕事中の脳は「理性」が占めている状態です。

 論理性をあえて落として、いったん「無責任な状態」で無邪気に物事を考えてみる。そうすることで、セレンディピティがおとずれやすくなるのです

 この確率を上げることが、コロナ前と現在では、課題レベルが大きく異なっているのです。それを踏まえて、クリエイティブでいるためにどういう技法があるのかを見ていきましょう。