集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──
私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。
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なぜ今、「集中」が必要か
「人は1日4時間しか集中できない」
これは、1万時間の法則で有名な心理学者アンダース・エリクソンの言葉です。
これを聞いて、おそらく1つの疑問が浮かぶでしょう。
「1日4時間も集中できている人なんて、今の時代、いるのだろうか」と。
私は、人の集中の度合いを測るメガネ「JINS MEME(ジンズミーム)」を用いて、これまでたくさんの人の「集中」について研究してきました。
その結果では、なんと84%の人が、1日4時間の集中すらもできていないことがわかってしまいました。
メガネデバイスを自分で購入して集中を高めようとする人たちでさえ、その比率なのです。実態は、もっとひどいことになっているでしょう。
さらに衝撃的な研究は、マイクロソフト社のカナダの研究チームが2015年に発表した研究報告です。
「現代人の集中力は8秒しか続かず、これは金魚の9秒を下回る」
これにより、「ついに人の集中力は、金魚に負けた」と話題になりました。この研究によれば、2000年の時点では、人の集中力の持続時間は、12秒程度あったそうです。
しかし、PCやスマホの普及によって、1つのことに集中する力が落ちてきて、2013年には、8秒しか集中力を持続できなくなったのです。
もしかしたら、あなたもここまで読んでいる間に、何度か他のことを考えてしまったのではないでしょうか。
それだけ、「1つのことを考える力」が弱っているのです。
多くの人は、「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
日本で培われてきた禅的な取り組みが、アメリカ西海岸を中心とするIT系企業内などで見直され、アップルのスティーブ・ジョブズ氏が取り入れていたことや、グーグル内のSearch inside yourselfなどの活動で一躍有名になりました。
これを簡単にまとめると、次の通りです。
“情報化社会によって、脳に入ってくる情報が多すぎて、注意力が散漫になりやすい。だから、人として重要なはずの深い思考ができなくなっている。ならば、情報を遮断して、深く集中できる人の象徴であるお坊さんに瞑想の学びを得よう。”
という話です。
我々現代人は、いつだって、「同僚か取引先の人か家族か友人」が、「スマホかPCかリアル」を通じて、「チャットツールか電話かメールか直接話しかけ」をしてくる。
そのような状況です。
しかし、人の大脳は、同時に2つ以上の課題を処理できないことがわかっています。
PCの脳にあたるCPUは、パワポとネットブラウザとエクセルと……と、同時に別々のことを処理できますが、人間の脳は1つずつしか処理できません。