マスク姿のライオン像Photo:PIXTA

3回目の緊急事態宣言で、再び都心での臨時休業を強いられる百貨店。このたび2021年3月期通期決算を公表した三越伊勢丹ホールディングスは、あるべき百貨店の姿に原点回帰する方針を掲げており期待が持てるが、やはり難点も見える。西の雄・阪急阪神百貨店を擁するエイチ・ツー・オー リテイリングも独自の戦略を提示したが、その課題も指摘しておく。(リテールジャーナリスト 村上達也)

「生活必需品」を拡大解釈する他社もいる中
苦境でも三越伊勢丹の計画が目を見張る理由

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた3度目の緊急事態宣言で、東京都と大阪府の百貨店が続けて、生活必需品を除いて休業を強いられる事態となりました。

 そこで、昨年春の休業で大赤字となっている百貨店各社は、生活必需品の「範囲」を広げるという“裏ワザ”に出ました。髙島屋に至っては都内4店で、化粧品だけでなく婦人服や紳士服も「生活必需品」だと主張して、売り場を開けました。

 日本橋店の売場を見ますと、新館も本館も宝飾品を除いてほぼ通常通りの営業です。同社の定義に従えば、バカラのグラスも、フェラガモのバッグもグッチのワンピースも、アルマーニのスーツもゼニアのネクタイも「生活必需品」だということになります。どうせなら密状態が続く食料品売り場を休業したらどうかと前回書きましたが、いずれにせよ売り上げの確保に血眼になっています。

 そんな中、三越伊勢丹ホールディングス(HD)が5月12日、2021年3月期決算と同時に発表した「中長期計画」には、目を見張るものがありました。