方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店#13Photo:kyodonews

地方百貨店の再生モデルとして三越伊勢丹ホールディングスが力を入れる愛媛県・松山三越のリニューアル。だがその内実は、有力ブランドに離反され、約200人の大規模リストラが突然公表されるなど混乱に満ちている。特集『地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店』(全13回)の最終回となる#13では、むしろ反面教師にしかならないその内幕を描く。

売上高はいよてつ高島屋の3分の1
松山三越がリニューアルを計画しているが

 各地で苦境に立つ地場百貨店に対し、大手が“再生のお手本”を示せるだろうか。全国的に有名な四国の温泉街での計画は、むしろ大失敗の様相を呈していると訴える声がある。

 文豪・夏目漱石の代表作の一つ、『坊っちゃん』の舞台となった道後温泉がある愛媛県松山市。三越伊勢丹ホールディングス(HD)傘下の松山三越は、地方都市ながらにぎわいを見せる大街道商店街のアーケード北端という好立地で、松山城を望む絶好のロケーションを誇る。

 地下1階、地上8階建ての同店のリニューアルが発表されたのは2020年7月29日。百貨店としての売り場を大幅に縮小し、ホテルやエステを入居させるほか、地場産品の販売スペースを拡充させる計画で、21年秋のオープンを目指す。

 市内には、地元の伊予鉄グループが高島屋と提携して運営する百貨店「いよてつ高島屋」があり、こちらは20年2月期で売上高342億円と四国で首位。最終利益も8100万円を計上している。

 一方で松山三越はいよてつを上回る好立地ながら、同年3月期で売上高117億円と大きな差をつけられ、8億円超の最終赤字に沈んだ。

 こうした状況を打破すべく、三越伊勢丹HDが「地方百貨店の再生モデル」として注力しているのが松山三越のリニューアルだ。ところが、業界をリードする大手百貨店が鳴り物入りで進めるこの計画は現在、大混乱に陥っている。その内幕をのぞいてみると、驚くべき光景が広がっていた。