安楽死を希望する女性のツイートに19年1月、大久保容疑者が「訴追されないならお手伝いしたい」と返信。同11月、大久保、山本の両容疑者が別々の新幹線で京都駅に到着し、ホテルで合流した。

 2人で女性のマンションを訪問し、ヘルパーに「知人」と告げて訪問記録に偽名を記載して面会。約10分後、2人はいなくなり、女性は意識不明の状態で発見され、その後、病院で死亡。体内からは普段使用していない薬物が検出された。

 その後の府警の調べで、大久保容疑者がツイッターに故・手塚治虫氏の代表的作品「ブラック・ジャック」に登場する安楽死を専門とする「ドクター・キリコになりたい」などと投稿していたことが判明した。

雑な殺人計画と
希薄な危機感

 嘱託殺人事件では、自由に動けないながらも瞳の動きでSNSに投稿するなど意思表示でき、体調にも問題がなかった女性の元に「知人」を名乗る男2人(山本、大久保両容疑者)がいきなり訪問してきた。

 ヘルパーが席を外した隙に、男2人はいなくなっていて、その間に女性の容体が急変した。誰かが119番するだろうし、「変死」扱いで検視と司法解剖が実施されることは予想できるだろう。実際、女性が服用していないはずのバルビツール酸系の薬物が検出された。警察が「殺人事件の疑い」で捜査に着手するのは当たり前だ。

 山本、大久保両容疑者は医師であるにもかかわらず、なぜ、そんな間抜けなことをしたのだろうか。

 靖さんに対する殺人がうまくいったため、その成功体験により「今回もうまくいく」と考えたとすれば、多少のつじつまは合う。

 前述のデスクによると、3人は靖さん殺害を1カ月前から計画していたとみられる。火葬や死亡診断書作成など、殺害計画をうかがわせるメールをやりとりしていたらしい。靖さんは長野県に入院していたが、山本容疑者が主治医に「転院先が見つかった」と告げ、連れ出していた。

 その日のうちに淳子容疑者が、死亡届と一緒に「心臓や血管の異常で急死」と記載された死亡診断書を東京の中央区役所に提出。診断書には山本、大久保両容疑者と共通の知人の医師の名前が記されていたが、所属先は実在しない診療所だった。この医師は府警に対し「(診断書について)心当たりがない」と説明している。