星野リゾートを特徴づける戦略に「運営特化」がある。 原則としては自社で土地や建物を所有せず、施設の運営に集中している。 これは外資系ホテルと同じ経営スタイルだが、日本のホテル産業では所有と運営は分離されていない。 星野リゾート代表の星野佳路氏は、このことこそ日本が外資系ホテルの相次ぐ進出を許した理由だと考えている。そして今後、外資系ホテル群とのガチンコ勝負が本格化すると見る星野氏の覚悟とは?(構成/斎藤哲也)

バブルで林立したリゾート施設

 星野リゾートを特徴づける戦略に「運営特化」があります。短期的に所有するケースや特別な事情により保有する案件もありますが、原則としては自社で土地や建物を所有せず、施設の運営に集中しています。

 日本では、バブル経済期に総合保養地域整備法(通称リゾート法)が施行され、新しいリゾート施設が日本各地に誕生しました。私が、家業の「星野温泉旅館」の4代目に就任した1991年は、バブル経済の崩壊がリゾート産業に本格的に悪影響を与える前でした。当時の私には、80年代後半から続々と誕生した新しい客室供給量に見合うだけの旅行需要が日本にあるとは思えず、しばらく供給過多が続くと感じていたのです。この逆風の中で、新たな施設を自ら開発し所有することにはリスクがあります。

 社長就任の翌年に当たる92年に私たちは「運営特化戦略」を選択します。資本力が弱小であった星野リゾートは、新たな不動産リスクを取るべきではないと考えました。供給過多の中では既存案件の所有者から真の運営力が求められてくるので、そのサービスを提供するビジネスモデルを目指すことにしたのです。当時の観光産業において温泉旅館やリゾートホテルの運営サービスを提供する企業はなく、この意思決定が星野リゾートの成長につながります。

星野リゾート代表が語る、日本が外資系ホテルの相次ぐ進出を許した決定的理由世界のホテルチェーンがグローバルに急拡大できた理由とは?(写真はイメージ) Photo:Adobe Stock

 世界のホテル業界では、80年代から「(施設資産の)所有」と「(ホテル旅館サービスの)運営」の分離が急速に進んでいました。ホテル運営会社の誕生は、ホテルを運営せず所有できるという時代の到来を意味し、これはホテル産業への投資が進むきっかけになったのです。所有はそれを専門とする投資家に任せ、ホテル会社は運営に特化するというパートナーシップは、ホテル経営の生産性を格段に高め、過去40年間、産業の成長を実現してきました。

 しかし日本では、土地や建物を所有しながら運営も手掛ける事業形態がその後も長く主流であり、その結果として近年、外資系ホテル運営会社が次々と日本に進出してくるチャンスをつくってしまったと考えています。