2019年、香港で市民vs警察が対立し、激しいデモが起きた様子は世界中に衝撃を与えた。あれから2年、“中国化”が静かに進む香港では、かつての宗主国・英国が手を差し伸べたことにより移民ブームが起こり、さらに過去最大人数の公務員が辞職し、香港を離れているという。香港で今、何が起こっているのか。(フリーランスライター ふるまいよしこ)
あのデモから2年
香港市民の間で「移民」が大きな関心事に
香港で2019年6月に、中国への容疑者移送を盛り込んだ「逃亡犯条例」改定草案を行政長官が出したのに対し、市民100万人(同9日)、200万人(同16日)の反対デモが立て続けに行われ、世界中を驚かせてから約2年。政府側の硬直した態度に激高した市民側の抗議活動が激化し、市内のあちこちで「激戦」が展開されたが、2020年には新型コロナウイルス感染拡大騒ぎでその抗議活動はほぼ収束した。
しかし、中国政府はその間を利用して昨年6月に香港国家安全維持法(以下、国家安全法)を制定、即時施行した。同法は、香港市民にとって見慣れない「愛国」や「忠誠」を求め、司法や行政、さらには立法府である香港立法会に新たな制度措置をもたらした。それに違反し、その容疑が深刻と判断されれば、中国国内の法廷に送り込まれて裁かれる可能性も盛り込まれており、「逃亡犯条例草案がこういう形で復活するとは」と香港社会を恐怖に陥れている。
萎縮した市民につけ込むように、今年3月30日には行政長官と立法会議員選出の新たな選挙制度がやはり中国政府のお膝元で決定。詳細はまた別の機会に書くが、簡単に言えば、新選挙制度では長年市民が待ち望んだ全面民選が遠のいた。加えて一人一票どころか、複雑な新制度下において政府ご指名の機関やその関係者らが一人最大44票も投じることができるとメディアは分析している。
強大な権力によって一方的に狭められていく自由と権利に、市民は失望を深めている。そして静かに、しかし顕著に「移民」が人びとの関心事になっている。