3回目の「移民ブーム」、今までとは大きく異なる

 行き先として人気なのは文化の近い台湾で、移民受け入れ政策こそないものの近隣の日本も視野に入る。さらに伝統的移民先である米国、カナダ、そして英国およびシンガポール、豪州などの英連邦……筆者のFacebook上でも、昨年から今年にかけてすでに3組の知り合いが英国への移民を決行したことを事後報告しているのを目にした。

 筆者は1997年の主権返還前の香港でも、移民ブームを体験した。しかし、その時と大きく違うのが、今回は移民した先で永住する覚悟ということだ。前回は多くの人たちが「帰ってくる」ことを予想し、妻子を先に移民先に送り込み、その国籍取得を待って夫が移民するケースや、出産地国籍政策を取る米国やカナダでの出産後、子供とともに戻ってくるなどの行動も手段として取られていた。

親中党が掲げ始めた「変革香港」のスローガン。しかし、「変化」を求めていない市民の受けはあまりよくない。Photo by ふるまいよしこ親中党が掲げ始めた「変革香港」のスローガン。しかし、「変化」を求めていない市民の受けはあまりよくない 写真:ふるまいよしこ

 だが、香港の親中派は今回の移民ブームで、中国の国籍法を香港でも施行して二重国籍をなくすべきだと叫び始めた。香港ではこれまで、外国籍を取っても香港の永久居住権は認められていた。それを剥奪せよ、というわけだ。こうして“中国化”する社会環境下で先の3組を含む多くの人たちは今回、「帰ってこない」ことを決断し、香港を後にしつつある。