2020年、BBCの「今年の100人の女性」に広島県の老舗酒蔵、今田酒造本店の4代目蔵元で杜氏(とうじ)の今田美穂さんが選ばれ、大きな話題になった。日本酒作りの現場では近世中期以降、女人禁制とされてきたが、近年は女性が杜氏や蔵元を務めることも珍しくない。女性に対する潜在的な「差別」が問題になることが多い中、伝統的な「女人禁制」の世界はどう変わっていくのか。(清談社 武馬怜子)
根強く残る
女人禁制の世界
2021年2月、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗氏が「女性の話は長い」と発言して批判が高まり、組織委員会会長の座を追われた。また、テレビ朝日の報道番組『報道ステーション』が女性を軽視したCMで大炎上し、放送停止になるなど、女性差別への社会の対応は年々厳しくなっている。
そんな時代にあって、しばしば話題になるのが「女人禁制」を巡る議論だ。
「女人禁制」とは、前近代には女性を「けがれ」とみなし、霊山の登拝、祭事への参加などへの女人の参加に制限が加えられてきたことをいう。
「女人禁制」の歴史に詳しい慶應義塾大学名誉教授・鈴木正崇氏はこう話す。