プルデンシャル生命保険で「前人未到」の圧倒的な業績を残した「伝説の営業マン」である金沢景敏さん。営業マンになった当初はたいへん苦労しましたが、あることをきっかけに「売ろう」とするのをやめた結果、自然にお客様から次々と「あなたからサービスを買いたい」と連絡が入るようになりました。どうすれば、そのような営業スタイルを作り上げることができるのか? 本連載では、金沢さんの初著作『超★営業思考』を抜粋しながら、その「秘密」をお伝えしてまいります。

“超一流の営業マン”が、「クロージング」を一切しない深い理由写真はイメージです。 Photo: Adobe Stock

小手先のテクニックを弄して、
長期的な利益を失ってはならない

「僕は、クロージングはしません」

 こう言うと、いつも驚かれます。

 ご存じのとおり、クロージングとは、商談の最終段階において、お客様の購買心理を誘導して確実に契約に結びつけるテクニックのこと。このテクニックに長けているかどうかで成約率に差がつくため、「クロージングをしない」と言うと驚かれるのも当然のことかもしれません。

 実際、実績を出している営業マンの多くは、クロージングを熱心に研究して、お客様に「YES」と言わせる技術を磨き上げているものです。僕も、”駆け出し”のころは、そうした先輩たちのクロージング・テクニックを学んでは商談の際にいかそうとしていました。

 だけど、やっているうちにだんだん違和感を覚えるようになりました。

 例えば、あと一歩で契約をお預かりできそうだったお客様が、最後の最後に「もうちょっと考えさせてもらっていいですか?」と決断を引き延ばそうとされたようなときに、ベテラン営業マンであれば、そういうときにうまく切り返して、その場で決断をする方向に、さりげなく誘導する技術をもっているわけですが、いくら「さりげなく」しようとしても、そこにはどうしても営業マンの「売りたい」という欲望が滲み出てしまいます。それが、どうしても好きになれなかったのです。

 それに、お客様も、そうした営業マンの心理を敏感に感じ取ります。たとえその場で契約をお預かりできたとしても、お客様との信頼関係には微妙な距離が生まれるような気がしてならないのです。

 だから、僕は「原点」を大事にしたほうがいいと思うのです。

 契約は、営業マンのものではなく、あくまでもお客様のもの。これが、営業の「原点」です。そして、生命保険という高額商品の購入を決断するわけですから、お客様が慎重になるのも当然のこと。無理にクロージングしようとするよりも、あくまでもお客様のご意思で決断していただくべきだと思うのです。

 このように書くと、綺麗事のように聞こえるかもしれません。

“超一流の営業マン”が、「クロージング」を一切しない深い理由金沢景敏(かなざわ・あきとし)
元プルデンシャル生命保険ライフプランナー AthReebo(アスリーボ)株式会社 代表取締役
入社1年目にして、プルデンシャル生命保険の国内営業社員約3200人中の1位(個人保険部門)になったのみならず、日本の生命保険募集人登録者、約120万人の中で毎年60人前後しか認定されない「Top of the Table(TOT)」に3年目で到達。最終的には、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な実績を残した。
1979年大阪府出身。東大寺学園高校では野球部に所属し、卒業後は浪人生活を経て、早稲田大学理工学部に入学。実家が営んでいた事業の倒産を機に、学費の負担を減らすため早稲田大学を中退し、京都大学への再受験を決意。2ヵ月の猛烈な受験勉強を経て京都大学工学部に再入学。京都大学ではアメリカンフットボール部で活躍した。
大学卒業後、2005年にTBS入社。スポーツ番組のディレクターや編成などを担当したが、テレビ局の看板で「自分がエラくなった」と勘違いしている自分自身に疑問を感じて、2012年に退職。完全歩合制の世界で自分を試すべく、プルデンシャル生命保険に転職した。当初は、アポを入れようとしても拒否されたり、軽んじられるなどの“洗礼”を受けたほか、知人に無理やり売りつけようとして、人間関係を傷つけてしまうなどの苦渋も味わう。思うように成績を上げられず苦戦を強いられるなか、一冊の本との出会いから、「売ろうとするから、売れない」ことに気づき、営業スタイルを一変させる。
そして、1年目にして個人保険部門で日本一。また3年目には、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRT(Million Dollar Round Table)の6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。最終的には、自ら営業をすることなく「あなたから買いたい」と言われる営業スタイルを確立し、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な業績をあげた。
2020年10月、プルデンシャル生命保険を退職。人生トータルでアスリートの生涯価値を最大化し、新たな価値と収益を創出するAthReebo(アスリーボ)株式会社を設立した。著書に『超★営業思考』(ダイヤモンド社)。