「選択肢」を示すことで、
思考を焦点化する
ただし、「期限」を切るだけでは足りません。
「期限」を切ったうえで、「何を考えればいいのか?」「何を決めればいいのか?」を明示して差し上げることが大切です。思考の焦点が定まっていないからこそ、お客様は「あれこれ」と迷ってしまうのです。その迷宮から抜け出していただくために、保険のプロとして「問題の要点」を示すべきなのです。
そのためには、保険の内容についてコミュニケーションを深める過程で、お客様の反応をよく観察して、どこで迷っているのかを把握しておくことが欠かせません。そのうえで、問題の要点を選択肢で示してあげます。
例えば、「重要なのは、保険料をAとBのどちらのプランでいくかを決めることです」とか、「ドルを持つか、持たないかがポイントですね。どちらにするか決めたらご連絡ください」などと伝えるのです。
もちろん、このとき、僕は「保険に入る」ことを前提にお話します。
自信をもって組み立てたプランをご提案しているのですから、それは営業マンとしては当然のことです。そのうえで、お客様が熟考すべき「選択肢」を明示することで、正しい決断をサポートしようとしているわけです。保険に入るか入らないかの選択肢ではなく、保険に入るという土俵の上での選択肢を示すのです。
こうして、「期限」と「選択肢」というボールをお渡ししたうえで、あとはお客様にお任せします。結局、期限を過ぎてもご連絡をいただけなかったり、最終的に契約を見送ることになるケースもありましたが、クロージングをしていたときよりも成約率が下がることはありませんでした。
しかも、契約をお預かりすることができなかった場合でも、ご検討をいただいたことに対する御礼を丁寧に伝えることで、お客様との信頼関係が強化されて、あとになって改めてお声がけをいただくようなことがたくさんありました。だから、クロージングをすることによって、お客様の不信を買うようなリスクを冒すよりも、こちらのほうが「よほどよい」と確信するようになりました。
「損得」だけで判断するお客様とは、
割り切ったお付き合いをする
また、お客様が「他の商品も検討したい」とおっしゃる場合にも、「どうぞ、よく比較してから決めてください」とお伝えしていました。
これは、正直に言って「強がり」です。本当は、「僕を信頼して、僕から保険に入ってほしい」と思っています。だけど、それがお客様の希望であれば、「どうぞ」と言うほかありません。
一方で、こういう腹のくくり方はしていました。
例えば、同じ保険内容で他社からも見積もりを取って、「1円でも安いほうを選ぶ」とおっしゃるのならば、そもそもご縁がなかったのだ、と。なぜなら、保険というものは基本的に、どの会社から入っても「大差」ないからです。つまり、「金沢さんから入りたい」と思っていただけるかどうかが、営業マンの勝負なのであって、だからこそ、営業マンという存在に「値打ち」があるわけです。
にもかかわらず、たかが「1円の差」で他社の保険に入るとおっしゃるのならば、僕という営業マンの存在価値はありません。だから、お客様の価値判断がそういうところにあるのならば、「どうぞ、他社の保険に入ってください」と割り切るようにしていました。
実際、そういうお客様は、他社から「よりよい商品」が売り出されると、簡単に乗り換えます。
もちろん、それは「僕という人間」の魅力が足りないからでもありますから、その点については反省もしますが、「損得」だけを価値判断の軸にされているお客様は、「この営業マンは誠心誠意やってくれるから、なんとか応援してあげたい」などと考えてくれることはありません。だから、こちらも割り切ってお付き合いするのが正解ではないかと思うのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。