ワクチン接種の遅れが日本にもたらす「決定的な格差」の正体緊急事態宣言の再延長は日本経済にどのような影響をもたらすのか Photo:PIXTA

政府が緊急事態宣言の延長を決定した。とりあえず6月20日までの延長だが、感染状況がどう推移するのか予断を許さない。宣言の延長で経済がより大きな打撃を受けるのは間違いないが、一方である種の「宣言慣れ」も起きている。宣言延長の経済的な影響について探った。(経済評論家 加谷珪一)

「緊急事態宣言」だけが
景気低迷の要因なのか

 政府は2021年5月28日、東京や大阪など9都道府県に対する緊急事態宣言の延長を正式に決定した。延長はほぼ確実視されていたので驚きはないが、6月20日までは「非常時モード」が続くことになる。加えて、5月31日が期限となっていた埼玉、千葉、神奈川、岐阜、三重の5県に対する「まん延防止等重点措置」についても、6月20日までの延長が決まった。

 前回、緊急事態宣言が出されていた1月から3月にかけてのGDP(国内総生産)成長率は、物価の影響を除いた実質で前期比マイナス1.3%、年率換算では5.1%もの落ち込みとなった。個人消費がマイナス1.4%と大幅に下落するなど、宣言の発出が消費に致命的な影響を与えたことが分かる。

 こうした結果を踏まえると、緊急事態宣言が延長されれば、その分だけ消費が落ち込むのは確実であり、1~3月期に続いて4~6月期についてもGDPへの影響が懸念される。ちなみに1~3月期については、前年同期と比較して名目で3兆円近くのGDPが失われたので、4~6月期についてもそれに近い水準のマイナスが発生してもおかしくない。