不安1人でいることは、みじめで恥ずかしい。はたしてそうなのだろうか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

レビュー

 本書『孤独と不安のレッスン』には、「シラフの時は頼れる仲間なのに、酒に酔うと彼女を殴る最低の男」という話が出てくる。あなたなら、このような男とどのようにつきあうだろうか?簡単に関係を断つことができれば話は簡単だが、必ずしもそうはいかないこともあるだろう。

『孤独と不安のレッスン』書影『孤独と不安のレッスン』 鴻上尚史著 大和書房刊 748円(税込)

 著者は、自分と関係のない人は「他人」であるが、自分に喜びや幸せと同時に孤独や不安を与える人は「他者」だという。「他者」とどのようにつきあうかによって、人間的成熟度が測られるといっていい。

「他者」とのつきあい方に熟達するには、まず「本当の孤独」を理解することが重要だ。孤独はみじめなことでも、みっともないことでもない。みじめだと思い、ネットや周囲の人になぐさめを求める状態は、「ニセモノの孤独」だ。自分との対話を重ね、「自分は何がしたいのか?」「本当は何を考えているのか?」を理解できれば、そうした苦しみから解放され、のびのびと生きられるはずだ。

 もちろん日本で「本当の孤独」を生きるのは難しい。世間とは、私たちにとって神のような存在だからだ。世間に従い、「みんな仲良く」と迫ってくる圧力はとても強い。しかしそれを振り切って、「1人でもかまわない」と思ったほうがいい。世間はあなたの人生に最終責任を取ってはくれないからだ。