(まいったな、疲れがたまっているのかな。こりゃあ、倒れてしまうかもしれない)

 不安に駆られながら帰宅し、夜は早々に就寝。翌朝を迎えた。(手指の具合はどうだろう)確かめるように動かすと、症状はさらに悪化していた。左手の指も右手同様にこわばり、曲げにくくなっていた。

 もはや様子を見ている場合ではない。急いで近所の整形外科を受診すると問診・触診、血液検査、X線検査をしてもらい、「結果は1週間後」。再診すると医師は検査データを見ながら言った。

「関節リウマチの可能性が高いです」

 結果が出るまでの1週間、マサオミさんは自分の症状をネットで調べまくり、(関節リウマチかもしれない)とは予想していた。というのもその後、体の不具合が怒涛(どとう)の勢いで進行したからだ。

 当初右手だけだった手指のこわばりは、すぐに両手の全部の指に広がった。さらに腕がずっしりと重たく感じ、両肩に激痛が走る。ただ事ではないと思った。

「関節リウマチとは、関節に炎症が起きて、痛みや変形が生じる病気です。女性、高齢者の病気というイメージがありますが、患者の約20%は男性ですし、近年は増加傾向にあります。特に30~60代の働き盛りの男性で発症する方が多いんですよ。

 原因は明らかにはなっていませんが、男性の場合、喫煙や感染症が主な原因になります。喫煙はいけませんよ。関節リウマチの発症リスクは2~14倍に増加しますし、関節リウマチの治療効果も20~60%減弱しますからね」

 淡々とした医師の説明は、マサオミさんをいら立たせた。

「喫煙はしません。人生で一度も吸ったことはないです。お酒だって、付き合い程度しか飲まないし、食事にも気を付けて、運動も週2回プールに通って泳ぐことを習慣にしてきました。それなのにどうして…」

「そうですね。こればかりはどうにも。ただ以前は、関節リウマチに対する有効な薬はありませんでしたが、現在では炎症や炎症の原因となる免疫の異常を起こりにくくする薬が次々と登場しています。早期に治療を始めることで、骨の変形を防ぎ、寛解(かんかい。病気が落ち着いて安定している状態)を保つことができるようになっています。

 残念ながら現在の医学では完全に治すことはできませんが、治療しながら普通の生活を送ることは可能です」