2012年10月、旗艦店であるうめだ本店を新装オープンさせた阪急百貨店。阪急百貨店を運営するエイチ・ツー・オー リテイリングの椙岡俊一会長兼CEOに狙いを聞いた。
──自身がかつて決断した改装が7年を経て、ついにオープンした。
お得意さまの中には、店員に抱き付いて、「よかったね」と言ってくれる方もいた。また、値段も見ずに、購入してくれるというケースが非常に多かった。
そうした従来のお客さまに加えて、これまで百貨店に来ていなかった、若い層も来てくれていた。これは狙い通りだ。
というのも、今回の改装は、モノを売る前に、まず、とにかく百貨店に来てもらうことを目標としている。たくさんの人が集まる場所を目指した。それが当たり、普段なら百貨店に来ないお客さまが、土日に多く見られた。
年間の予算を日割りした数字は今のところ達成できている。
──8万平方メートルのうち、イベントスペースなどモノを売らないスペースを2割も取った。
モノが余っている時代にモノを売るためにはどうすればいいのか考えた。そこで、今回は百貨店の原点に戻った。生活と文化が融合する業態、別の言い方をすれば、暮らしのための劇場。それを構築したかった。
モノの前に、まず情報。そのために、各階にイベント広場、9階には吹き抜けの祝祭広場を設けた。百貨店の従業員は、スペースがあると、ついつい、売り場にしたくなりがちだが、その思いを抑えて、文化、情報のための空間に場所を割いた。