「黒船がやって来る」。この春から始まった大阪百貨店戦争の主役と見られてきたJR大阪三越伊勢丹だが、開業後に客の支持を得たのは、無名に等しかった隣の専門店ビル「ルクア」のほうだった。三越が出店を決めた6年前には、さざ波程度だった専門店ビルの台頭という消費の新しい潮流に流された面もある。
5月、JR大阪駅上に高々とそびえ立つ新北ビルが誕生し、大阪百貨店戦争の火ぶたが切られた。話題の中心は常にJR大阪三越伊勢丹だった。
今春から始まった百貨店の出店と増床で、大阪市内の百貨店の売り場面積は従来の1.5倍に膨張するという前代未聞のオーバーストア状態になる。その引き金となったのが、2005年に三越が決定したJR大阪駅新北ビルへの新規出店だった。これに対抗して梅田エリアの阪急本店と大丸が増床を決めると、それがミナミにまで波及し、高島屋と近鉄本店も増床に乗り出した(下図参照)。
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さらにその後、三越は伊勢丹と経営統合し、店づくりの主導が伊勢丹になるというどんでん返しまでついてきた。ライバルが三越からファッションに強い伊勢丹に変わったとあって、東京からの“黒船来襲”にもたとえられ、大阪市内の百貨店は警戒心を強めてきた。
ところが、5月にオープンしてみると様子は違った。好調なのは三越伊勢丹ではなく、開業までは無名に近かった隣の専門店ビル「ルクア」のほうだったのだ。
オープン初月の売上高は、三越伊勢丹が45億円、ルクアが41億円。売り場面積は、三越伊勢丹5万平方メートル、ルクア2万平方メートルと、2倍以上の開きがあるにもかかわらず、初月の売上高がほとんど変わらなかったのだ。
初年度売上高の目標は、三越伊勢丹550億円で、ルクア250億円。12ヵ月で割って月換算すると、それぞれ46億円と21億円で、ルクアが絶好調なのは確かだ。
しかし、百貨店が新規に開業する際はオープン特需が見込めることから、「初月の売上高は年間目標の12分の1ではなく、その1.2倍は欲しい」(アナリスト)。つまり、三越伊勢丹でいえば55億円がボーダーラインだが、これに届いていない。