近年、中学受験では「大学付属校」人気が高まり、激戦となっています。2021年入試でも、大学付属校の難化傾向が目立ちました。そんな中で「早慶GMARCH」「関関同立」をはじめとする、人気の「付属中学」の合格を勝ち取るにはどうすればいいのでしょうか?
「御三家をはじめとする進学校と同じ対策をしていてはダメ」というのは、「中学受験 大学付属校合格バイブル」の著者で、早慶をはじめとする大学付属校専門の中学受験塾を経営されている野田英夫氏。実は大学付属校の入試問題には、基本的な問題が多く進学校のような難問が少ないので、付属校に特化した対策をすれば偏差値が足りていない子でも逆転合格がかないやすいのです。
発売即重版となった本書から、知られざる付属校受験の実態や、合格のためのノウハウの一部をお伝えしていきます。
中学受験成功のための2つの柱とは?
最初に親御さんにお伝えしておきたいのは、中学受験成功のためには、二つの柱があるということです。一つ目の柱は、本書でも多くお伝えしていくような「合格のためのテクニック」です。
出題傾向、勉強法、塾選び、模試の使い方、併願校の決め方などの知識を得ること、その知識を活用することが、それにあたります。
そしてもう一つの柱は「中学受験に対する思い」です。つまり、受験の目的です。なぜ中学受験をするのか。なぜその学校を受けるのか。それが子どもの中で明確になっていないと、過酷な中学受験を乗り越えることはできません。先ほどのテクニックにも増して重要なのは、この「中学受験の目的」なのです。
子どもというのは、コップのようなものです。どんなに能力があっても、地頭がよくても、中学受験の目的がわかってない子というのは、コップが「逆さ」になっているようなもの。いくらこちらで知識を注いでも、入っていかないのです。ただただ流れていってしまうだけ。これでは、せっかくの勉強や時間が無駄になってしまいます。同じことを何度言ってもわかってくれないのは、コップが逆さになっているからです。
もしかすると「うちの子もそうかもしれない……」と思われたのではないでしょうか。これは何も皆さんのお子さんだけの話ではありません。長年中学受験の指導をしていますが、「なぜ受験するの?」「なぜこの学校なの?」と質問して答えられる子は、生徒の約2割。8割の子が、具体的な目的を持たずに、受験勉強を始めてしまっています。「親にやらされている」という気持ちを持っている子もいます。受験が「自分ごと」になっていないのです。受験が自分ごとになっている状態を、私は「自分受験」と呼んでいます。
中学受験の目的は親子で一致しているか?
中学受験における親の最初の役割は、「受験の目的を共有すること」、これに尽きます。周りが塾に行き始めた。「それならうちもそろそろ」と、なんとなく近くの塾や実績が出ている塾に通い始める。気がついたら中学受験が始まっている……。そんなご家庭も多いはずです。
もしそうだとしたら、一度ここで立ち止まりましょう。そして、親子で中学受験の目的について、話をしてみてください。お子さんは本当に受験をしたいのか。それはなぜか。そして親はなぜ受験をさせたいと思っているのか。それぞれの思いについて、話をしてみましょう。
この思いが合否につながる学校もあります。
慶應です。慶應は面接が合否に与える影響が大きい学校ですが、面接で確認されるのは、「受験の目的が親子で一致しているか」という点です。慶應には、三つの中学校があります。慶應義塾普通部、慶應義塾湘南藤沢中等部(SFC)、慶應義塾中等部です。中等部では親子3人の面接で、湘南藤沢においては、本人面接で聞いたことを、保護者面接で確かめるという念の入れようです。子どもと親が同じ方向を向いているかどうかを面接で確認しているのです。
保護者の中には、「テクニックがあれば合格できる」と信じている人がいます。大多数といってもいいかもしれません。しかしそれは幻想です。しっかりした中学受験の目的を親子で持っていないと、どんなテクニックも結局身につかないからです。親の役割は、まず子どものコップを上向きにすることなのです。