近年、中学受験において、早慶のみならずGMARCHクラスの付属校人気が高まっている。特集『最強の中高一貫校&小学校・幼児教育』(全18回)の#4では、「付属校受験には専門の対策が必要」と言う早慶GMARCHに多数合格者を輩出している塾の塾長、野田英夫氏に、「普通の子でも、早慶などの大学付属校なら合格できる」理由を聞いた。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
空前の付属校人気は
日東駒専にまで拡大
――近年の、付属校人気の背景として、大学入試改革や私立大学の定員厳格化が指摘されていますが、受験生や保護者の意識も大きく変わってきたのでしょうか?
そうですね。「うちの子は大学付属校でお願いします」というご家庭が近年、急増していることは間違いありません。
私が運営する大学付属中学受験専門塾「早慶維新塾」や「早慶ゼロワン」は、早慶以外の大学付属校を志望する子どもも入学できますが、いわゆるGMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学)クラスの付属校を志望するご家庭も、近年は早慶と変わらないぐらいの熱の入れようになっていますね。
――一昔前は、早慶ならいざ知らずGMARCHクラス、ましてや日本大学に何も中学から行かなくても、という考えが大勢でした。
一昔前どころか、本当につい最近までそうです。それは、私たち中学受験のプロも同じです。付属校受験の志望校といえば、少し前まで早慶ぐらいだったのが、この数年でGMARCHが常連となり、さらに今では日東駒専あたりまで広がってきているというイメージです。
その理由は今、一般受験による大学入学が本当に難しくなっていることにあります。例えば、日本大学豊山女子に通う中学生は、「このまま日大に進学する」と言っていました。「他の大勢の友達も猛勉強しているけれど、学力で日大の希望学部への合格は難しい」と。昨今の大学入試の変化を考えると、やはり付属校受験による“先物買い”という選択はありだと思います。保護者も「大学は中学受験で決める」という考え方が定着しつつあるようです。
ただ、昨今、付属校人気はよく指摘されますが、中身をよく見ると中学受験における第一選択肢としてメジャーになったとはいえません。今年度の小学校6年生の受験生が、いわゆる難関大を目指す進学校と、大学付属校のどちらを志望しているのかといえば、ある大手進学塾の例でおよそ8割が進学校を志望しています。そういう意味では、やはり中学受験の本流は進学校のままです。
大手進学塾は、どうしても子どもをそのご家庭も含めて競争させ合うことで運営が成り立つところがあります。典型的なのが、成績順のクラス分けです。基本的には難関進学校に代表される難しい入試問題をやっていれば、また高い偏差値を取っていれば、それより低い偏差値の学校はおのずと合格できるだろうという考え方に基づいています。
たとえ子どもや親が大学付属校を志望していても、大手進学塾では「付属校は子どもの可能性を狭めますよ」という説得で志望校や進学先を変えるよう促すことがよくあります。例えば、明治大学の付属校と同程度の偏差値の進学校にダブル合格したとして、「最終的な出口を明治大学に決めてしまうのはもったいない。進学校に進み大学で国公立や早慶を目指しましょう」というふうに。
――大手進学塾が付属校を志望することに後ろ向きになるのはなぜですか?
その理由は、付属校の入試問題にあります。