偏差値50からたった10ヵ月で早大学院に逆転合格

 目的の大切さは、逆転合格をした例からもわかります。

 5年生の3月、受験まであと1年というところで、私の塾へやってきた“のりくん”。算数の成績が伸び悩み、大手塾からの転塾を決意したとのことでした。この1年は、のりくんにとって過酷な1年でした。お父さんが経営する会社の裁判で敗訴し、住んでいた家を売却しなければならなくなったのです。敗訴が決まってしばらくすると、のりくんは「弁護士になりたい」と言うようになりました。お父さんのように困っている人を助けたいという思いを持つようになったのです。6年生になった4月には、「早稲田大学に行って法学部に入る」と話すようになりました。それからのがんばりと成績の伸びには、目を見張るものがありました。苦手にしていた算数の成績も改善し、6年の初めに50だった偏差値が、最終的には69まで上がりました。受験直前期には算数の成績が一番よかったほどです。そして、結果は5校受けて全て合格。第一志望だった早大学院へ進学することができました。

 のりくんとご家族にとって、非常につらい1年ではあったのですが、中学受験の目的が明確になったことで、勉強の姿勢も変わり、それに伴い成績は急上昇しました。そして合格を勝ち取ることができたのです。「絶対に合格する」という強い目的がなければ、このような結果には結びつかなかったと思います。

 ここまで強烈な出来事でなくても、その子に目的があるかないかで、合格可能性は大きく変わります。その目的が大人にとっては些細なことでも、子どもにとって受験のモチベーションになるなら全く問題はありません。

「将来、アナウンサーになりたい」
「この学校で馬術部に入りたい」
「この学校の制服をぜったいに着たい!」

 大人にとっては、些細と思えるような夢でも、子どもにとっては大きなモチベーションになります。どんなに子どもっぽい目的であっても、合格可能性は実際に高まるのです。なぜなら、目的がある子というのは「言われた以上の勉強を自らする」ようになるからです。

 どんなにいい塾に通っても、塾での勉強時間はたかが知れています。受験というのはいかに「塾以外の時間、勉強できるか」にかかっているのです。目的がないと、「塾で言われたことをやる」というレベルにとどまってしまいます。目的があるかないかが、テクニック以上に合格を引き寄せる要素となるのは、その子の勉強の量と質に直接関わってくるからです。

 そしてその目的によって、お子さんが付属校を選ぶか、進学校を選ぶかが変わってきます。お子さんと中学受験の目的を確認し、志望校を決めるためにも、まずは親御さんが付属校と進学校の具体的な違いをしっかりとおさえておきましょう。