取材の合間も自転車の修理をしたり、部品を買いに来る自転車店などの店主の依頼に応じて、新たにメーカーに注文をする。

「俺がしっかりしていないと、このあたりの自転車店の親父(店主)たちが困ってしまう。そんな使命感もあるわけよ」

ネットで売れてもそれだけではダメ
お客の信頼を得るには直接話すこと

店頭にあるリヤカーのタイヤ

 コーエイ商会は数年前からホームページを設け、リヤカーやその部品などを販売し始めた。近藤さんの知人が作ってくれた。

 これが3つめの事業、リヤカー販売である。以前から店頭で部品を売っていたが、時折地方から問い合わせがあった。そこでネット販売を始めたところ、全国各地から注文が続いた。

 1台10万円近いものがネットで売れるのかと聞くと、近藤さんは太い声を出す。

「それが面白いくらいに売れるんだ。注文が多いのは、板張式のものかな」

 そして、販売実績を書いた台帳を見せてくれた。そこには全国の役所、防災関連団体、小中学校、神社、自治センター、石材店、大手企業の工場などからの注文が書かれてあった。タバコをおいしそうに吸いながら説明する。

「あのねぇ……リヤカーはネットを見ただけで買うものではないんですよ。お客さんは必ず、電話をしてくる。たとえば、タイヤのサイズや故障したときの対応などでね。

 そんな問いにきちんと受け答えできるようになるためには、数十年の経験が必要。1つずつの対応を大切にしないと、ネット販売であろうと店頭であろうと、商売はダメ。私は、こんなことを50年近くもしてきたから、どんな問いにも答えることはできる」